風水害の素因

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風水害の直接の誘因は、夏季を中心とする梅雨前線・不連続線・台風などによる豪雨という気象条件であるが、豪雨がただちに洪水や土砂流となる素因は、地形・地質に関係している。とくに六甲山地の花こう岩は、断層活動により圧砕化がはげしく、指圧程度でも土砂粒となる、いわゆる「マサ」状のところのあることや、花こう岩中の節理(石の目)が数センチメートル~数十センチメートル間隔で発達するため、その面から剥落して岩屑が谷を埋めているところが多いことなどによる。しかも海岸線からわずか数キロメートルの距離に九〇〇メートルを超す山地があり、ここを源流とする河川はその勾配(こうばい)が急で、浸食作用の活発な上流部が堆積の場となる下流部に直結し、流量や土砂運搬の調節をおこなう中流部を欠く、という決定的な欠陥をもっている。
 山地の荒廃、河川の浸食で生産された土砂や岩塊は、平水時には運搬されることは少ないが、洪水時に土石流となっていっきに下流部へ運びだされる。六甲山地の山麓部は扇状地がよく発達しているが、これらは過去の土石流の積みかさねであり、今後もさらにくりかえされることは自然の法則である。したがってこの地域を生活の場とする限り、風水害対策をおこたることはできない。