全国各地の発掘調査によって、石器には、形態・組合わせ・出土層位・製作技術についてちがいのあることがわかってきた。そして石器はいろいろな変遷を経てきたことも明らかになった。もちろんそれぞれの時期にはいく種類かの石器が使われており、また入手や加工の容易な木材・獣骨を利用した道具も使われたはずであるが、腐食したためか今まで一つも発見されていない。
宝塚や周辺で発見された「土器のない時代」の石器はきわめて少ない。最古のグループに属する石器は、周辺の地域にもみあたらない。つぎの時期のナイフ形石器は、ひろく全国的に出土し、近くでは川西市加茂や芦屋市朝日ケ丘で採集されている。加茂や朝日ケ丘で採集された石器は、その材質や形態からも、西日本一帯に広く分布するものに一致する。したがって、この地方の人びとも西日本各地に広く共通する生活を送っていたと推定できる。
ナイフ形石器は、形態や出土層位などから長い間の使用と、その間の変遷が認められる。その実年代を探ることはなかなかむずかしいが、放射性炭素14Cによる年代測定と、堆積土の研究によって、二万五〇〇〇~一万五〇〇〇年の間に位置すると考えられるようになってきた。