中筋字平井から発見されたと伝える鏡が一面、東京国立博物館に収蔵されている。径一二・八センチメートルの唐式鏡である。鏡背の文様は、表面がはなはだ荒れてはいるが、圏線で限られた内区は、鈕の左右に二羽の鳥が向い合い、上下には二頭の竜が飛雲の中をかける姿を鋳出している。圏線と鏡縁の間の外区には稜に対応するように一つずつ飛雲文がみられる。名づけて「向鳥双竜文八稜鏡(はちりょうきょう)」と称している。
古墳から出土したのではないかともいわれているが明瞭でない。米谷の火葬墓のような墳墓との関係を説く見解もあるが、根拠はない。奈良時代における、この地での人びとの生活と活動を示す貴重な資料としてみておきたい。