大衆はお札が降った家に供え物を届けて酒食のもてなしをうけ、ええじゃないかの囃子(はやし)をもって歌をうたい乱舞した。時期的には少し遅い例であるが、慶応四年正月七日鳥島村(安倉村枝郷)の弥右衛門の家にお札が降ったときの様子をみてみよう。
当七日・八日両日休村中惣踊、菟角よいじゃないか/\/\か
せんぎょう(施行) 七日惣村中壱日、八日荒まし寄附人酒肴握飯ニて振舞
一七日目祭り上りニ相成り、御備もの餅みかん惣村中其外備もの之御方不残配、赤飯
小一重宛
外ニ同行衆・近所村親類不残ル上リ、十三日昼後より御客呼酒肴赤飯盛出ス、目出度
相済
群衆のええじゃないかの乱舞は明確な革命意識をもっての行動ではなかったけれど、日ごろ支配をうけている村役人や商人の家にあがりこんで酒飯の供応を求め、また大阪付近という政治的・経済的中枢地帯で、政治をまひさせ倒幕運動に拍車をかけたところに、世直しの方向がかくされていたといってよい。
表79 慶応3年の御札降り
月日 | 降り物 | 降った家 | 降った場所 |
---|---|---|---|
12・1 | 大神宮御剣先 | 安場村 治兵衛 | 門先 |
・15 | 〃 | 善右衛門 | 門内 |
12・1 | 荒神御絵 | 安倉村 治郎兵衛 | 屋根上 |
・6 | 大神宮御札 | 新右衛門 | 新助直々渡し |
・9 | 〃 | 久兵衛 | 家の棟 |
・10 | 〃 | 武兵衛 | 屋根上 |
・12 | 〃 | 吉之右衛門 | 屋敷内 |
・13 | 〃 | 八右衛門 | 〃 |
〃 | 利兵衛 | 〃 | |
・14 | 荒神御絵・梵字巻物 | 清蔵 | 〃 |
・5 | 荒神御絵 | 安倉のうち鳥島 六右衛門 | 〃 |
金毘羅御札 | 清助 | 下家内 | |
・6 | 金一朱 | 幸七 | 屋敷内 |
牛頭天王御札 | 佐兵衛 | 〃 | |
・7 | 箱御札 | 治兵衛 | 〃 |
猿田彦御札 | 吉右衛門 | 〃 | |
・11 | 大神宮御札 | 〃 | 〃 |
〃 | 宇兵衛 | 〃 | |
(ママ) 11・晦 | 大神宮箱御札 | 徳右衛門 | 〃 |
4年 1・7 | 大神宮御札 | 弥右衛門 | 門の松 |
11・25 | 大神宮箱守 | 中山寺村 九兵衛 | 中庭松木 |
・26 | 大神宮御剣先鹿島大明神御札 | 太兵衛 | 笹につけ天窓に |
・28 | 妙見大菩薩金像 | 佐兵衛 | 稲荷鳥居上 |
12・8 | 金二朱 | 勢平 | 屋根 |
11・1 | 地蔵菩薩御絵 | 山本村 三右衛門 | 裏口草上 |
・2 | 大神宮御札 | 武兵衛 | 門先木のもと |
・3 | 三宝荒神御札 | 〃 | 大神宮神壇 |
・8 | 古びた紙の御幣 | 林平 | 表出口 |
11・24 | 大神宮御札 | 山本のうち丸橋 源右衛門 | 部屋先 |
12・1 | 石地蔵尊 | 甚左衛門 | 屋敷内 |
・3 | 大神宮御札 | 野里 利右衛門 | 座敷先 |
・5 | 黒金仏地蔵尊 | 野里 伊左衛門 | 軒 |
・7 | 一分銀 | 新田 三右衛門 | 門囗 |
・8 | 戎大神宮木像 | 〃 | 裏植木棚 |
・11 | 三宝荒神御札 | 彦五郎 | 裏口 |
12・1 | 大神宮御札 | 平井村 喜兵衛 | 門の塀屋根 |
・8 | 朝日市蛭子御絵像 | 忠兵衛 | 門口敷の上 |
日天子御絵 | |||
・10 | 中山寺の寺星供守 | 忠右衛門 | 屋根の塀上 |
・11 | 大黒天御絵 | 藤兵衛 | 裏口外 |