内務卿大久保利通は、明治十一年三月十一日大区小区制の問題点を指摘し、「地方之体制等改正之議」を上申した。その要点はつぎのとおりである。(一)大区小区という「奇異ノ区画」を設けたことは人心に適せず、便宜を欠き利益なく弊害あるのみである。(二)区制は、「行政ノ区画タルト其住民社会独立ノ区画タルトノ主義ヲ混淆セリ」したがって、「官民互ニ権利ヲ犯スノミナラス才出入ノ事即チ官民費用ノ事ニ就テモ、頗(すこぶ)ル混雑シテ往々地方ノ物議ヲ来ス等ノ事アリ」。(三)故に、古来の慣習と現今の人智の程度とを斟酌(しんしゃく)して、実情に適した制度を設ける必要がある。すなわち、府県郡市は行政の区画であるとともに、その住民社会独立の区画であるように「二種ノ性質ヲ有セシメ」、「村町ハ住民社会独立ノ区画タル一種ノ性質ノミヲ有セシメ而シテ郡市ニ吏員ヲ置テ其二種ノ性質ノ事務ヲ兼掌セシメ町村ハ其村町内共同ノ公事ヲ行フ者即チ行事人ヲ以テ其独立ノ公事ヲ掌ル」ようにしなければならない、というものであった。