軍人教育と演習

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明治十五年には軍人勅諭が発布され、天皇制軍隊の軍人精神が育成されることになった。そのころ徴兵されたものは常備軍三カ年の勤めを終わった後も、予備軍としての訓練を毎年一定期間、兵庫県の場合は姫路で受けることになった。十六年には徴兵令の改正があり、現役は三年・予備役四年・後備役五年となり、免役制は猶予制に改正され、代人料は廃止された。
 軍隊の野外演習もしだいに盛んになり、明治三十五年九月には、小浜村の民家に一二〇〇余名の将兵が三日間宿泊した。宿泊する町村は、将兵のために衛生上の取締まりを強化しなければならなかった。
 明治三十二年十一月のことであるが、秋季軍隊演習が明十一月七日に有馬郡三田付近でおこなわれるので、将兵が西谷村を通過するかもしれないと通報され、其筋より衛生上の取締まりにつき照会があった。ついては左記注意事項を厳重施行するように、と西谷村長は各区長に連絡している。
 (一)演習施行地域内各町村では、衛生組合事務所および予防委員事務所を設け検疫に関する事務をとること。(二)隔離病舎に達する路傍には標示をなすこと。(三)伝染病患者のいる家は、建物の正面に何病ありと記すこと。(四)軍隊に供給する飲料水は煮沸したものに限る。供給の手続として各所に左の設備をなすこと。掛員若千名、釜は湯沸用と茶碗煮沸用の二個以上、竈(かまど)二基以上、目籃(めかご)二個以上、茶碗若干、柄杓若干。(五)軍隊旅舎には煮沸水を備え生水を供してはならない。(六)軍隊に供する寝具は清潔なものを選び二日以上日光に曝(さら)し塵埃(じんあい)を払うこと。(七)本年伝染病患者のあった家から寝具その他を出させてはいけない。(八)食事前には食器を笊(ざる)に入れ熱湯中に浸すこと。(九)飲食物はその供給する町村において委員を設け精選させること。(一〇)軍隊旅舎は家屋内外を清掃し、便所には生石灰を投ぜよ。(一一)役場吏員・伝染病予防委員・正副衛生組合長および委員は、左胸に長さ二寸五分の黄色毛糸五〇条の中央を堅くたばねたものをつけること、などであった。