幣制改革の課題

114 ~ 114 / 620ページ
幣制の改革は、維新政府にとって緊急かつ重要な課題であった。というのも三〇〇〇余万の国民の経済生活に直接大きな影響をあたえるからであった。そして政府がとった政策は、江戸時代から流通していた貨幣と、新しく制定されるそれとの切替えの問題であった。
 維新当時、全国に流通していた流通通貨は、金・銀・銭の三貨が中心であったが、幕末以降はとくにその相場の変動がはげしかった。しかも金遣い・銀遣いの伝統が固守されて、金・銀・銭の三貨それぞれに、異なる価格表示がなされて、きわめて混乱した状況にあった。
 そこで、慶応四年五月八日の太政官布告をもって、まず「丁銀・豆板銀之儀、通用停止」の銀目廃止が宣言された。この銀目停止は、政府の今後における通貨政策上、強行されなければならない宿命的な政策であった。