国立銀行の設立

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廃藩置県当時二〇八種・総流通高二億四〇〇〇万両に及んだ藩札も、政府の負担で処理される一方、明治五年四月から政府は新紙幣を発券して、政府不換紙幣の統一にのりだした。そして明治五年十一月には「国立銀行条例」を制定したが、これはわが国の銀行制度の出発点となった。
 この条例によると、国立銀行は民間出資者が政府の免許をうけて設立されるもので、銀行はその資本金の六割にあたる政府紙幣を納付し、同額の銀行紙幣の発券を認められた。この銀行紙幣については、銀行は正貨兌換を義務づけられており、そのために資本金の四割にあたる金貨を兌換準備として保有する規定であった。この条例によって、明治六年東京の第一国立銀行をはじめ、四行があいついで設立された。
 しかしこれらの国立銀行の紙幣は、払出しと同時に正貨兌換され、銀行は営業資金に行詰った。銀行紙幣の流通によって、政府紙幣を消却しようとする政府の期待はここに裏切られ、銀行自体も営業不振におちいった。