明治二十一年の市制・町村制は、わが国に初めて制定された近代的地方制度であって、明治初期以来試行錯誤を重ねてきた地方制度の変遷のなかで、画期的意義をもつものであった。第一 自治および分権の原則により、明治維新以来の中央集権的地方制度を改めて、当時としては進歩的な地方自治制度を確立した。第二 自治区は法人として財産を所有し、これを授受売買して、他人と契約を結ぶ権利と義務を有し、また区域内は自ら独立してこれを統治するものであって、自治区を法人格を有する自治団体として明確に規定した。第三 明治維新以来の官治行政上の各地方官は、政府の委任により事務をなすにすぎなかったが、地方自治とはそのようなものではなく、政府が地方自治体に自治事務をおこなわせるとともに、「政府ノ事務ヲ地方ニ分任シ又人民ヲシテ之ニ参与セシメ以テ政府ノ繁雑ヲ省キ併セテ人民ノ本務ヲ尽サシメントスルニ在リ」として、国家的事務をも広い範囲にわたり移譲しておこなわせることとした。