プロローグ

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『ベルサイユのばら』、「フランス革命前のフランスを舞台にして、美しい王妃マリー・アントワネットと、スウェーデンの貴族ハンス・アクセル・フオン・フェルゼンとの恋、そしてフェルゼンを愛するオスカルの悩み、オスカルを愛するアンドレ、女性と知りながらオスカルに恋するロザリー、さまざまな人間感情をとらえた」池田理代子原作の劇画を宝塚で上演してほしい、という匿名の一ヅカ・ファンの投書が契機となって(阪急電鉄社内誌「阪急」3)歌劇「ベルサイユのばら」が公演されることになった(巻頭カラー写真3参照)。昭和四十九年八月二十七日初日、植田紳爾脚本、芸能生活六〇年の長谷川一夫演出、月組によって上演されてから一年半を過ぎた昭和五十一年五月、まだこの公演は終わっていない。同五十年五月には、宝塚歌劇始まって以来初めての大入袋が出た。また同年九月二十四日には、五〇万人目のお客に記念の賞品が贈られた。観客総数はやがて一〇〇万人に達しようとしている。小林一三が国民劇を理想として、大正三甲寅(こういん)の年に宝塚少女歌劇の幕をあげて以来、これほど多くの観客を集めたことはなかった。昭和四十九年は宝塚の地に歌劇が生まれて六〇年、これまでの成果の実質的な総集をおこなった還暦の年であり、また新たなつぎの六〇年への第一歩を踏みだす甲寅の年であった。
 六〇年という歳月は短いものではなかった。宝塚という土地でこれまで演じられてきた歌劇のあゆみを、その第一歩からみることにしよう。第一幕の緞帳(どんちょう)があがる。