日本最初のレビュー

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昭和二年五月に一ヵ年余の欧米劇場巡歴から帰った岸田辰彌は、大正十三年末に帰国していた高木和夫の作曲で、昭和二年九月「モン・パリ」を上演した。これは日本における最初のレビューであり、その歌「うるわしの思い出、モンパリ我が巴里」は大衆に愛唱され、長期続演の最初の記録をつくった。従来の演劇や舞踊の形式の殼を破った自由奔放な企画による、新しいモードと軽快なテンポ、登場人員二一〇人の幕なし一六場のモダニズムの大舞台の幕あきはすなわちレビュー時代の幕あきであった。この年三月十五日にはじまった金融恐慌により三七の銀行が休業し、零細な預金者と中小企業が被害を受けるという暗い世相に、モン・パリの歌声は一つの救いとして、ひろがっていった。

写真138 箕有電鉄湯屋業の鑑札
(阪急宝塚経営部所蔵)