波豆むらの抗議

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波豆むらは一月二十一日付で神戸市へつぎのような照会状を出した。
 去る十一月二十六日、用地内外の補償並に神社・寺院・墓地その他の移転補償などにつき波豆むら委員二名が交渉に行ったとき十二月十五日ころには図面ができるので波豆へ出張するとのことであったがまだ通知がない。聞くところでは千苅新田の買収はすでに示談が成立したというので、波豆むらでは「人心激昂(げきこう)鎮撫困難ノ場合モ有之候ニ付右ノ件々御確答」ありたい、という内容であった。
 三月になっても回答がないので八日に永瀬斌外一名が神戸市へ出張したが、意見の交換に終わった。その後西谷村へ出張の神戸市吏員に連絡方を依頼したり、面談したが要領を得なかった。四月十四日神戸市の長浜係長と書記が西谷村へ出張しているというので、波豆への出張を要請したところ中山書記だけが来村した。申合人は急遽集まり各自質問し意見を述べた。中山は「本月二十日開催セラルル市参事会ニテ貴村収用地ノ内耕宅地及家屋其他地上物件移転ノ価格等ヲ決議シ早速収用ニ付貴村ノ御承諾ヲ得度出張スヘシ云々又神社ノ石段方向変換ニツイテハ目下講(考)案中ナレハ具体的開(回)答ハナシ難シ小作人生計補償ハ耕宅地其他収用示談解決后ニ於テ何トカ多少ノ拱(考)量ヲナスヘシ」と、買収価格通知の近いことを告げたのである。「福井委員長ハ郡道改鑿(かいさく)、御旅所ノ移転、貯水池繰舟設置、漁業権(貯水池魚捕獲)、寺院ノ保存金等、収用ニ連結スル一切ノ事項ニ付諮議シ質問シ或ハ中山ノ説ヲ駁論(ばくろん)シ、種々ノ折衝ヲ試ミタルモ、彼ハ曖昧(あいまい)ナル言語ニテ遁辞ヲ弄シ確タル要項ヲ与ヘス」午後六時ごろ終わった。

写真157 千苅水源池普明寺橋工事中
『神戸市水道70年史』より