波豆むらへ買収通知

306 ~ 307 / 620ページ
大正四年四月二十九日ついに来るべきものが来た。耕地宅地および家屋その他地上物件の収用価格・移転料の通知書が、各土地所有者に配達された。波豆むらは翌三十日に申合人総集会を開き、神戸市から出張した長浜係長・中山書記・林事務員の説明を聞き、不在地主に連絡しそのあと善後策を相談した。五月三日役員会を開き、来村した不在地主に所有地の発表価格に関する交渉については委員長に一任することを了承してもらい、発表価格の値上げ交渉の方法を審議し、また用地界家屋移転の価格、村社の馬場先鳥居、御旅所の新設、各堰池の保存、小作人の救済方法、川岸の更正手続、収用後における田地小作米の処分等につき協議し、午後八時から総会を開いた。用地価格および移転料値上については西谷村長を介して郡長に、神戸市への交渉を依頼すること、不用道路・溝渠・河川・堤防等西谷村と交渉することは最高幹部に一任すること、各堰・池の補償要求については各掛人より意見書を委員長手許まで差出すことなどを決定した。それに従って、五日・七日・八日・十一日・十三日・十五日・二十二日・三十一日、六月一日・二日・三日と引続いて委員は郡役所や神戸市へ出張したり、村内の意見を聞いて歩いたりした。四日には区長を合め三名が用地収用示談方法、河川堤塘の払下、小作人の救済等につき交渉のため神戸市へ出張した。また別の三名は、官有地払下げ手続きおよび土地価格調査などのため郡役所その他へ出張した。