人口の推移

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宝塚にはじめて花が開き、やがてそれが、野面を覆う花園となるのは昭和初期のことである。大阪の土に播かれた種子から阪鶴鉄道というたくましい茎が宝塚までのびたのは明治三十年(一八九七)であった。明治四十三年三月十日には、さらに一本の茎箕面有馬電気軌道が宝塚にのびて、三月十七日には早くも西宮銀行が池田支店宝塚出張所を開設した。新温泉やパラダイス・商店・旅館・少女歌劇・音楽学校がつぎつぎと建ち並んだ。言わば、のびた茎の先端が蕾(つぼみ)をいっぱいにつけたのであった。さらにまた大正十年(一九二一)には、阪神間の土壌から西宝線(今津線の前身)がのびて、その茎に宝塚運動場や大劇場・ルナパーク・宝塚ホテル・植物園などの蕾がついた。昭和初年にはそれらの数多い蕾がいっせいに開花して、宝塚は色とりどりの蝶(ちょう)が舞う花園と化したのである。宝塚少女歌劇のレビューの舞台は、何よりもその美しさと楽しさとを象徴するものであった。しかしながら、市域の大部分には、農村不況によって、どん底に落ちた農民がこれを克服しようとして泥まみれの働きをつづけていた。天国と地獄、その明暗の対照が昭和初期の宝塚の街と村の姿であった。
 明治後期以来の宝塚の変貌(へんぼう)は、交通機関の発達と、温泉やレジャー施設の設置、河川の改修、住宅地の開発によるのであるが、変貌の速度と規模とを象徴的に示すものは人口の変化である。明治三十八年十二月の人口は、市域総計約一万四〇〇〇人、
 良元村 三一六〇人
 小浜村 三五九六人
 長尾村 四一五八人
 西谷村 三一六八人(明治三十一年四月)
で、明治四十年までに旧温泉のある良元村は九四人(三%)の増加を示したが、小浜村は一三名の減少、西谷村も減少し、長尾村は増加はしたが、四八人(一・二%)の増加にすぎなかった。明治四十年以降の人口増減の動向を、五年間(ただし大正六年から九年までは三年間)ごとの増減率で示した図14によってみることにしよう。

図14 宝塚市域各村の人口増減率 (明治40年~昭和15年)


 明治四十年から大正元年の五年間は、西谷村の場合六二人 二%の減、長尾村は三四一人 八・一%の増加であったが、良元村では四一〇人 一二・六%の増加、この間に新温泉やパラダイスができた小浜村は七四四人 二〇・八%と激増を示した。大正六年までのつぎの五年間は、長尾村が四・四%増にとどまったのに対し、西谷村三三〇人 一〇・七%、良元村四六六人 一二・七%、小浜村七七九人 一八・〇%の増加をみた。ところが第一回国勢調査がおこなわれた大正九年までの三年間は、西谷・長尾両村の約三%減少に対して、良元・小浜両村はいずれも増加した。増加率は良元村の一二・一%が小浜村の八%を越えた。大正十四年までの五年間は四カ村とも増加を示し、西谷村四・七%、長尾村六・一%、とりわけ良元・小浜両村はいちじるしく増加し、それぞれ二二・二% 二五・七%の伸び率を示した。
 大正十四年から昭和五年までの五年間は、良元村が一五八三人 二七・九%増の伸び率で最も高く、この趨勢は昭和十五年まで続いた。小浜村は一三九四人 二〇・一%の増加、長尾村二二九人 四・七%、西谷村三四八人 一〇・一%増であった。昭和十年までの五年間は良元村二三・二%、小浜村一八・八%、長尾村一四・一%、西谷村〇・五%のそれぞれ増加、続く昭和十五年までの増加は良元村において三三四四人で、これまでの最高の増加率三七・四%を示し、小浜村の増加数と増加率とはともに落ちて一五五二人 一五・七%にとどまった。長尾村と西谷村とはそれぞれ六・三%、八・〇%の増に過ぎなかった。

写真188 家が建ち並びはじめた栄町
大正期 (福井文子提供)


 右の人口増減の推移は、明治の末年から大正年間を経て太平洋戦争開始までの宝塚市域の急速な変化を端的に物語っている。特徴的な点をあげると、人口増加率においては小浜村と良元村とが、長尾・西谷両村とは一線を画しており、また人口増の先駈けは明治三十年代の良元村であったが、明治末年から大正十四年までの宝塚第一期高度成長期をリードしたのは小浜村であり、その後は良元村が優位を示した。特に昭和十年以降の三七・四%は、それまでになかった高率であった。各村の人口の推移は表69に示した。
 

表69 宝塚市域各村の人口 (明治40年~昭和15年)

年 次良元村小浜村長尾村西谷村合 計
実数指数実数指数実数指数実数指数実数指数
  人  人  人  人  人
明治40年3,2631003,5831004,2061003,13510014,187100
大正13,6731134,3271214,5471083,0739815,620110
  64,1391275,1061434,7461133,40310917,394123
  94,6401425,5131544,5911093,30010518,044127
  145,6701746,9301934,8691163,45411020,923147
昭和57,2332228,3242325,0981213,80212124,495173
  108,9342749,8872765,8171383,82012228,558201
  1512,27837611,4393196,1851474,12513234,027240

『兵庫県統計書』による