部落がその自治機能を有する一つの証拠は、部落会計が独立していることである。「安倉部落協議事項録」に昭和五年から同十三年までの予算表が記されており、この間の予算費目と金額をみると、若干の変化があるがほとんど変わらない。予算は、毎年二月あるいは三月初旬役員会で支出費目の年間予算額につき協議するが、その費目は区長費・副総代費・臨時費・警備費・道路費・上ノ池土木費・西最寄土木費・下ノ池土木費・新田土木費・事務雇費・常例費・年中席料である。その他の費目については当該年度の金額をきめる。すなわち昭和十年度は、役員会の出席者に支給する会議費二〇銭・弁当料四〇銭・日給壱人分一円四〇銭・小昼代一五銭・米俵一枚四銭・干鰯俵一枚一三銭・大叺古莚一〇銭・池魚入札に付弁当料二五銭などであって、部落行事のさいの支出基準額である。部落会の歳入は、会費収入を主とし、会費は部落会費（戸別平等割）・警備費（家屋賃貸格割六〇％および戸別割四〇％）・農業部費（耕作反別割および会員割）・水利費（水田耕作反別割）の合計であるが、これらを一括し部落費として年何回かに分割徴収していた。
　歳入金額については、毎年九月初旬にそれまでの上半期分の収支を検討し、その年の上半期分徴収高をきめていた。昭和十年についてみると、九月四日「同日午後二時ヨリ委員会開催拾年度上半期徴収高ニ付協議セシ処、前年度徴収高ヨリ約壱割増程度即チ一三七〇円程度徴収スルコト」となっている。その理由は、九月三日までの支出合計金が二二〇三円二九銭になっており、それまでの歳入合計は五〇七円七四銭であって、利息を除き差引一六九五円五五銭の不足となっていたからであった。翌十一年二月二十八日に十年度の決算をおこなったが、歳入合計は一八九四円四六銭、歳出合計は三七〇三円〇一銭で、一八〇八円五五銭が不足する計算となる（表82参照）が、これは信用組合より借入れている。この分は十年度下半期分として徴収されるのであるが、十一年九月二日までに徴収された金額は七三五円五四銭にしかすぎなかった。
 

 
　苦しい部落財政の事情を、昭和十年度決算の歳入明細によってみると、部落協議費の昭和八、九年度分の滞納がかなりあり、その納入を督促して僅かずつでも徴収しようとした様子がうかがわれる（表83参照）。