宝塚市域で直接爆撃の対象となり空襲をうけたのは、七月二十四日の川西航空機株式会社宝塚製作所であった。同所が二十年七月に第二次軍需工廠の指定をうけた直後のことであった。B29と小型艦載機あわせて約一五〇機から爆弾が投下され、二〇機ないし四〇機による波状攻撃が、宝塚製作所を目標に、加えられた。
　当時関西学院の学生や宝塚歌劇の女子挺身隊も、ここに動員されていた。川西航空機の鳴尾製作所も、すでに六月九日の爆撃で工場の六〇％に及ぶ被害をうけていた。それに追い打ちをかけるような形での宝塚製作所の空襲は、会社の航空機生産に決定的な打撃を与えた。会社側の報告でも、「遂ニ宝塚製作所モ亦空襲爆撃ヲ受ケ、同所ニ於ケル材料関係施設以外設備ノ大部分ハ壊滅シ、死者八三、重傷者三九ノ甚大ナル被害ヲ蒙リ、……生産作業ノ遂行ハ甚シク困難ヲ感ズル状態ニ逢着セリ」と絶望的な状況を報告している。
　なおその被害は工場のみにとどまらず、その周辺と仁川・段上・神呪方面の西宮市域にも及んだが、宝塚市域良元村の七月二十七日の調査では、表86のように死者二三人をはじめ、重傷者と家屋の全壊・半壊もかなりあった。負傷者は宝塚第一・良元両国民学校に収容され、そこが救護所にあてられた。
 

 
　死者・重傷者および被害家屋に対しては、良元村と川西航空機株式会社からそれぞれ見舞金が出されたが、死者一人につき五〇円はあまりにもむなしい金額であった。戦争末期の破局的状況を露呈していると同時に、やがて無条件降伏につながるいたましい戦争犠牲者となった。