要綱にもとづいて作成された第一次農地改革法案は、新しい法案というのではなく、政治的配慮により昭和十三年(一九三八)以来の「農地調整法」を改正する法案として、十二月四日第八九議会に提出されたのであった。松村農相は大要つぎのような提案理由を述べて、改革の必要を力説した。
現在の食糧問題を解決するには、食糧の供出や配給の操作などでは、ふじゅうぶんであって、農村・農家の土地制度の改革が根本問題である。最も穏健な、最も着実な方法で土地問題を改革し農業の基礎をかためなければ、食糧の増産はもちろん、思想上も文化のうえからもきわめて不安定な状態におかれるおそれがある。