農地の買収

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さて改革の最大の眼目とする農地の解放は、地主と耕作者の間に政府が介入し、地主より一定の農地を強制的に一定価格で一定の時期に買収し、小作農に売渡して自作農化する方式でおこなわれた。政府が買収する一定の価格は、土地台帳法にもとづく農地の賃貸価格の、田は四〇倍、畑は四八倍であり、兵庫県の場合田畑各一反歩の平均買収価格は、田九五〇円、畑五一五円であった。また買収された地主に対する報償金は、田については賃貸価格の一一倍、畑は一四倍であったが、一世帯当り二町歩を越える分については交付されなかった。なお買収金は一〇〇〇円未満の端数を除いて、第一二次買収分までは年利率三分六厘五毛の二年間据置き、二二カ年毎年元利均等償還の農地証券で支払われた。しかしこれは二十五年四月一日以降全額が買いあげられることに決定した。
 政府が買収する農地は、(一)不在地主の所有する全部の小作地、(二)在村地主の所有する一世帯六反歩(武庫郡・川辺郡)を越える小作地、(三)在村地主の所有する自作地と小作地を合計して一世帯一町八反歩を越える場合の超過分の小作地、(四)自作地だけで一世帯一町八反歩を越え、その経営状態が不適正な場合は自作地であっても、一町八反歩を越える部分の自作地、(五)名義上は自作地でも、請負小作・委託耕作などの契約により耕作されている農地の全部、(六)法人団体(公法人・神社・寺院・会社・工場等の私法人)の所有する農地は自作地小作地とも、原則として全部、(七)耕作可能な農地で耕作されていない農地全部、(八)地主が政府において買収するよう市町村農地委員会に申しでた農地、である。
 右に該当する農地であっても、つぎの場合は、自作農創設特別措置法によって買収から除外された。(一)国または都道府県などの公共団体が公共用または公用に供しているもの、(二)都道府県・市町村等の所有する農地で自作農の創設、または共同耕作の目的に供しているもの、(三)民間の試験研究地または農事指導に供している農地で知事の指定したもの、(四)都市計画法による土地区画整理施行地域で、知事が指定した区域内にある農地、(五)一般農地で、近い将来使用目的を変更することを相当として、市町村農地委員会や県農地委員会の指定したもの、(六)病気・応召・就学・選挙による公務就任等の特別の事由で、一時小作させているもの、あるいは一時不在地主所有になっているが、その特別の事由がなくなればふたたび自作地となり、また在村地主となる見込みのあるもの、(七)新開整地・焼畑・切替畑等収穫のいちじるしく不安定な農地または地割慣行のある農地、などである。
 小浜村尼宝土地区画整理地区の、現国鉄宝塚駅付近の事業の追加決定が、自作法第五条第四号による区域指定に関する諮問委員会で審議中に、都市計画兵庫地方委員会でなされたので、審議は尖鋭化し長びいたが、二十四年四月十二日全地域が指定された。
 昭和二十三年二月一日には知事岸田幸雄から、買収成績優秀の一九市町村農地委員会が表彰されたが、良元村農地委員会もそのなかの一つである。