農地の売渡

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政府によって買収された農地は原則としてその農地の耕作者に売渡されたが、この改革は農民解放のためであるとともに、農業生産力の向上という目的があったため、農地の売渡しをうける農家は農業に精進するものと判定されたもので、零細な農家は除外された。
 農地以外に、牧野・宅地・建物・農業施設なども、一定の条件により買収売渡しがなされた。買収売渡しは、昭和二十二年三月三十一日より二十八年三月三十一日まで二九回にわたっておこなわれた。全期間にわたる買収・売渡し実績を表91・92に示した。
 

表91 農地等買収実績表

市町村農地宅地建物牧野・採草地農業用施設・其の他報償金合計
面積件数金額面積件数金額数量件数金額面積件数金額数量面積件数金額件数金額
武庫郡
 良元村868.515208874.744.728,048.4663106,488.002.20832,287.4468.367.762741,051,887.92
川辺郡
 宝塚町998.708418943,322.806,350.0010069,263.408828,350.008114337.50136,223.125301,177,496.82
 長尾村1,364.5015421,336,842.2310,437.32112115,436.8012,160.00212,573.896541,667,012.92
 西谷村861.627430613,556.114,537.764428,841.40115,100.003.0001,224.0012.90619337.31111,657.96494760,716.78
合計4.093.4211,5983,768.465.8629,973.54319320,029.6010935,610.003.0001,224.0015.325262,962.25528,822.731,9524,657,114.44

『兵庫県農地改革史』による


 

表92 農地等売渡実績表

市町村農地宅地建物牧野・採草地農業用施設・其の他合計
面積件数金額面積件数金額数量件数金額面積件数金額数量面積件数金額件数金額
武庫郡
 良元村756.001506766,909.128,048.4665106,488.002.20832,287.44574875,684.56
川辺郡
 宝塚町965.413733920,886.766,350.0010069,263.408828,350.008112337.508431,018,837.66
 長尾村1,361.7231,1951,334,735.0310,437.32109115,436.80112,160.001,3051,452,331.83
 西谷村863.312592613,724.034,537.764328,841.40115,100.003.0001,224.0012.90628337.31644649,226.74
合計3,946.5133,0263,696.254.9429,373.54317320,029.60101035,610.003.0001,224.0015.325332,962.253,3663,207.960.79

『兵庫県農地改革史』による


 
 今、農地解放以前の耕地面積を昭和十六年(一九四一)でみると、四カ村総計は一一七一・四町歩、自作地六〇八・三町歩(五一・九三%)、小作地五六三・一町歩(四八・〇七%)であった。
 農地改革によって買収された農地面積は、四〇七・三町歩であるから、解放された面積は小作地の約七二%余である。各村別では、良元村約八五%、小浜村約七五%、長尾村約六八%、西谷村約六七%であった。
 農家総数のうち小作農の占める比率を昭和十六年と、農地解放のほぼ終了した昭和二十五年二月一日現在とで比較してみると、
 四カ村合計 三九・五%から五・七%に
 良元村 四六・五%から八・八%に
 小浜村 五五・五%から一一・一%に
 長尾村 三六・八%から一・五%に
 西谷村 二二・八%から三・六%に
それぞれ大幅な変化をみせている。これは明治初年以来のまことに大きな土地所有の変革であった。
 買収売渡しにともなう登記は、通常の申請登記ならば十五年間の事務分量であったといわれる。しかし特例として簡易化された方法でおこなわれたことでもあり、兵庫県は所定の期日昭和二十五年三月三十一日に登記事務を完了した。長尾村農地委員会は、とくに早期完了優秀委員会として農林大臣から感謝状を贈られた。