買収と訴願

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農地の買収が始まるや否や不在地主でないと主張する訴願が多く提出され、第二回買収以後は種々の理由による訴願が続々とだされた。訴願の審議は県農地委員会規定第一三条に基づき特別委員会を設置して下審議し、県農地委員会で裁決する方法がとられた。
 宝塚市域関係の訴願の主なものは右のとおりであった。
裁決 年月日計画樹立の市町村農地委員会名訴願人住所氏名訴 願 の 要 旨裁決裁  決  理  由
 非農地であることを主張するもの 自作法五条四号、八号による該当農地であることを主張するもの
二二、九、三〇武庫郡良元村京阪神急行電鉄会社区画整理全地区の主要な入口に当る土地であり連絡道路として欠くことができない土地である棄却区画整理の認可を受けても施行されてなく五条四号の指定のない限り買収は相当である
二三、一二、二七武庫郡良元村武瘴郡鳴尾村明和興業株式会社さきに良元村農地委員会で自作法五条八号該当地として決定されており、その決定を取消さずしてなされた買収計画は無効である棄却本訴農地は現実に収穫不定農地とは認められずその決定は不当であって、知事が自作法施行令四七条の規定に基いて買収計画を定めることを命令したもので、その命令は不当とは認められず農地買収より除外する根拠はない
 選択権を主張する
二三、一一、二九川辺郡小浜村川辺郡小浜村北田庄治郎買収計画された農地は訴願人住宅の周辺にあり将来自作する農地であるから他の小作地を買収されたい棄却買収する農地は市町村農地委員会が自作法六条五項に基いて自作農となるべき者の農地を買受ける機会を公正に耕作する農地の集団化田畑の割合を適正にする等の見地より自主的に定めるもので所有者に選択権はない
 面積に関する訴願
二三、一一、二九川辺郡小浜村川辺郡小浜村西 ヱィ分家宅の両親死亡によりその子弟を養育する者なく、その成長するまで引取り養育しているが将来別居すること必至であり当然別世帯としてその保有地は計算することが相当である棄却現実に同一世帯でありその所有農地は合算して保有超過分は買収
 売渡の相手方を不服とする訴願
二三、一〇、一三武庫郡良元村武庫郡良元村中西弥一外二六名部落実行組合が会社より借受け希望者に耕作させ耕作者は生産物を物納して現在迄耕作中の土地である、売渡計画に表示された土地は会社が買収し整地したため現況と全く異なってをりしかも売渡計画による売渡の相手方は会社が買収する以前にその表示地番の土地で耕作していたに過ぎないものであり売渡の資格者ではない容認現耕作者が所有者より借受け完全な農地となし耕作中の土地であり法人の小作地として買収したものであると認められるから売渡は当然現在耕作中の訴願人でなければならない
二二、一〇、一三武庫郡良元村武庫郡良元村柴田多子蔵会社が本件土地を買収後耕作することなく放置していたので、良元村長等を通じ借受けて耕作し、部落実行組合を通じ小作料を納付してをり、不法占拠でないから当然現耕作者に売渡すべきが相当である容認現耕作者の耕作権取得は適法になされてをり、不法耕作と見做す理由はないから売渡の相手方は現在耕作する訴願人でなければならない

『兵庫県農地改革史』による