県農地委員会の決定

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さて、県農地委員会特別委員会はたびたび会議を開き審議を重ねたが、九月三十日の第二四回委員会においてもなお、未墾地と考える点においては意見の一致があるが、未墾地として買収するのが適当かどうかという点では一致せず、決定は十月十三日の本会議まで留保された。ふたたび双方の陳情がつづいた。村当局は県農地委員に、また村長・村議会正副議長は総司令部天然資源局長に陳情し、その時の問答を県農地委員会委員に報告している。村民に対しては議長が「良元村民各位に愬(うった)う」というビラを配布し村議会を信ずるように呼びかけた。他方、良元村耕作者同盟も「旧川西戦災地跡に競馬場設置絶対反対」の意志を表明し、議長・議員および旧町内会長のような行動をしている衛生組合長を糾弾する旨を表明した。
 十月十三日には第二五回県農地委員会が開催され、きわめて緊迫した状況のもとに買収方針の賛否が問われたところ、未墾地として買収に賛成する者九票、賛成しない者一四票という結果になった。これを県農地部長は農林省農地部長に緊急報告した。耕作者同盟側は、部落解放全国委員会兵庫県連合会第三回大会や沖縄人連盟兵庫県本部・兵庫県地方産業別労働組合会議が、それぞれその決意を決議した。また日本電気産業労働組合兵庫県支部尼崎地区協議会は、要望書を県農地委員会に提出し、県農地委員各人を訪ね再審議のための県農地委員会を早急に開会する要求に調印を求める運動を展開した結果、十一月二十九日第二六回県農地委員会が開かれた。慎重協議した結果、「本件は十月十三日に既にひとたび買収しないことに決定しており、一事不再理の原則もあるので、この際委員会としては極力この問題解決の為調停に乗出すこと」に決定した。そして調停委員として、田中九右衛門・谷畑善四郎・福田敬太郎・石本雅男・堺芳雄の各委員がえらばれた。なおこの間十一月二十六日には農林省開拓局長より知事宛に「未墾地として買収しないことに決定したのは適当と考えられる」と通達があった。
 耕作者同盟側は、中央農地委員会に陳情書を提出し、「過去八カ月間に亘(わた)る血の滲(にじ)む様な経過を伝えると共に、急迫せる現状を訴え、貴農地委員会の早急なる現地踏査を懇願すると同時に、公正妥当なる御裁定を仰ぐ」と述べている。