昭和二十一年八月十日、勅令三七三号で教育刷新委員会官判が公布され、さきの日本側教育家委員会を、教育改革のための常任の委員会としたのである。この委員会は内閣総理大臣直属のものであり、自主・独立の審議機関であった。従来の教育関係の審議機関は、文部大臣の諮問事項について審議し答申したのであるが、この委員会は教育に関する重要事項の調査審議をおこない、その結果を内閣総理大臣に報告することを主な目的とし、ついで内閣総理大臣が諮問した教育に関する重要事項についても答申することになっていた。委員は五〇人以内で、内閣総理大臣の奏請で内閣が任命し、政治・教育・宗教・文化・経済・産業等の各界の学識経験者のなかから選ばれることになっていたが、じっさいは教育関係者が多く、官僚は委員になっていなかった。
昭和二十一年九月七日の第一回総会において、内閣総理大臣吉田茂の代理国務大臣幣原喜重郎は、この危機を克服するための最も根本的な問題は教育の刷新であるとし、過去の誤った理念を一擲(いってき)して真理と人格と平和を尊重する教育を考えるために、この委員会が設けられたことを述べた。文部大臣田中耕太郎は、教育関係者自身が教育の改革に指導権をもち、民主主義的教育制度を樹立することが重要な課題であるが、憲法改正案の議会通過が目前に迫っており、教育制度の根本的改革は急がねばならないことを述べた。
昭和二十一年十一月二十九日の第一三回総会において、教育の理念および教育基本法に関すること、十二月二十日第一六回総会では国民学校初等科に続く教育機関についての審議結果を採択した。十二月二十七日第一七回総会では、中学校に続くべき教育機関、高等学校に続く教育機関、教員養成、私立学校、教育行政に関することを採択し、同時にこれまでの採択事項をまとめて第一回建議事項とした。
昭和二十二年一月十七日第一九回総会では、「六・三義務教育制度昭和二十二年度実施について」、昭和二十二年度から必ず実施することを要望する旨決議し、第二回建議事項とした。
六・三制に関して、国民学校初等科に続く教育機関としては、教育の機会均等を徹底させるために中学校のみとし、義務制、男女共学・全日制、修業年限三年とした。