このような農家が、増加する耕地面積の経営を家族労働力だけでおこなかったか、あるいは雇用労働力で補ったかをみよう。表102は、経営耕地面積別各層の農家が三十一年八月以前の一年間に他人を雇った日数をしめすものであるが、この表をみると左下から右上への対角線の近くに農家が分布している。これは耕地面積が広い農家ほど、人を雇う日数が多いという傾向をしめすものである。また表の左の方、雇用日数〇日および五~九日の欄の下から上への線上にある農家がある。これらは耕地面積が広くても、まったく人を雇わないか、あるいは人を雇うことの少ない農家であり、農業労働に従事する家族の数が多いか、家族の労働時間が多い農家であろう。
表102 長谷むら経営耕地面積広狭別・雇用日数別農家分布
経営耕地面積 | 日 | 日 | 日 | 日 | 日 | 日 | 日 | 日 | 日 | 日 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0 | 1~4 | 5~9 | 10~19 | 20~29 | 30~39 | 40~69 | 70~99 | 100~199 | 200~299 | ||
反 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 |
20~25 | 1 | 1 | |||||||||
15~20 | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 | ||||||
10~15 | 4 | 3 | 1 | 2 | 1 | 11 | |||||
7~10 | 4 | 3 | 6 | 2 | 15 | ||||||
5~7 | (3)+7 | 2 | 2 | 1 | (3)+12 | ||||||
3~5 | 1 | 1 | 2 | ||||||||
1~3 | 2 | 1 | 3 | ||||||||
計 | (3)+9 | 1 | 9 | 9 | 4 | 2 | 2 | 1 | 1 | (3)+48 | |
% | 39.6 | 2.1 | 18.7 | 18.7 | 8.3 | 4.2 | 4.2 | 2.1 | 2.1 | 100.0 |
農家はまた従来農業経営を円滑におこなうためには、山林採草地が必要であった。その必要の程度はしだいに低くなったが、このむらでは果樹を植えるという利用方法があり、所有山林一町五反六畝一四歩のうち一町二反一二歩が十年生の果樹林であるという農家もある。三十一年現在で農家の山林所有の状況をみると、表103のとおりであり、経営耕地面積が広いほど山林所有面積が大きいという傾向があらわれている。
表103 長谷むら経営耕地面積広狭別・山林所有面積広狭別農家分布
経営耕地面積 | 山林0反 | 反 | 反 | 反 | 反 | 反 | 反 | 反 | 反 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
~3 | 3~5 | 5~10 | 10~30 | 30~50 | 50~100 | 100~300 | 300以上 | |||
反 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 1 | |
20~25 | 1 | 4 | ||||||||
15~20 | 1 | 1 | 1 | 1 | 11 | |||||
10~15 | 1 | 1 | 3 | 1 | 4 | 1 | 15 | |||
7~10 | 1 | 1 | 2 | 6 | 4 | 1 | (3)+12 | |||
5~7 | (3)+1 | 2 | 3 | 3 | 1 | 2 | 2 | |||
3~5 | 2 | 3 | ||||||||
1~3 | 2 | 1 | ||||||||
計 | (3)+4 | 5 | 6 | 2 | 12 | 7 | 8 | 3 | 1 | (3)+48 |
〔注〕表102・103の(3)は外来者である
さて、以上のことがらを基本として農家の動きをみると、耕地や山林を所有する農家のうち、所有面積の大きいものは、それを基盤として耕地面積を拡大してゆき、田植えや取入れなどの人手が不足する時期には他人を雇って労働力を補い、収穫量をふやしてきた。このような方向に進んできたのは経営面積一町歩以上の上層農家の多くのものであるが、一町歩以下の層も二十一年から二十六年にかけては同様の方向をしめしていた。しかし二十六年以降三十一年にかけてはこのような農家数が減少し、むしろ耕地面積を減少する農家がふえてきた。そして表104(1)などによってみると、林業や農業・土木等の仕事に雇われるようになるか、あるいは農家の経営主や長男が会社や官庁勤めにでるようになり、自家の農業を従とする傾向があらわれた。前者について詳細にみると、「あなたはどこかに雇われますか」という問に答えた雇われ農家の数は一三戸であり、そのうち一~三反層一戸、五~七反層・七~一〇反層・一〇~一五反層それぞれ四戸であって、一町歩以上の上層農家までが雇われて働くようになった。また後者の場合、その農業経営は老人と妻による三ちゃん農業になったのである。つぎに雇用者側に「あなたは誰を雇いますか」と問い、その答で集計すると、雇われる家数は増加して二三戸となり、その内訳は非農家五戸、むらの外の者二戸、むらの内の農家は一六戸であり、その内一戸は入植者である。表104(2)は、それらを経営面積別・自小作別にしめしている。ところで、右の雇われ農家はまた、日数は少ないが他の農家の人を雇うこともあるのであって、雇われ農家一六戸のうち七戸は人を雇っている。雇用日数一~四日の農家一戸、五~九日五戸、一〇~一九日一戸である。
表104 (1)長谷むら農業・林業・土木労働被雇用日数別農家分布表 (2)被雇用農家自小作別分布表
経営耕地面積 | 農業・林業・土木労働・被雇用日数 | 計 | 自・小作 | 計 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1~9日 | 10~19日 | 20~49日 | 50~99日 | 100~200日 | 自作 | 自小作 | 小自作 | 小作 | |||
反 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 | 戸 |
20~25 | |||||||||||
15~20 | 1 | 1 | |||||||||
10~15 | 1 | 2 | 1 | 4 | 2 | 1 | 1 | 4 | |||
7~10 | 1 | 3 | 4 | 1 | 1 | 2 | 1 | 5 | |||
5~7 | 2 | 1 | 1 | 4 | 1 | 1 | (1)+2 | ||||
3~5 | 1 | 1 | |||||||||
1~3 | 1 | 1 | 2 | 2 | |||||||
計 | 4 | 3 | 5 | 1 | 13 | 5 | 2 | 4 | 4 | (1)+15 |
〔注〕(1)は入植者である