二月七日の長尾村臨時議会は、一二対八で伊丹市との合併を議決した。二月九日には下中筋の阪上彦四郎が主催する村民大会が開かれ、合併に関する村会での強行採決をなじり、民意を尊重しない村会の即時解散を要求する声が強かった。十日には伊丹市会があるから、合併決議反対の決議文をつくり、村民大会の名で伊丹市へ提出することになった。「伊丹市へ申込決議」の内容はつぎのようなものであった。
合併問題をめぐり長尾村民は村会を解散して、慎重にことを運ぶことを要求していたが、村会は村民の意にそむき二月七日伊丹市合併を決議した。この決定は、長尾村民の意志に反するものである。長尾村民は、今や改めて村民の世論をにない、かつ村民全部の信任を得た新村会によって合併問題を再審議しようとしている。このような「村会ニヨル合併決定ナラバ虚心坦懐欣然(きんぜん)トシテ伊丹市ニ合併サレルコトニ讃意ヲ表スルデアロウ」、と記している。この決議文をもって伊丹市会および同議長に申入れた。
伊丹市会は二月十日に開かれ、長尾村合併の件を可決した。長尾村では翌十一日、長尾村山本の亀島丈平が代表となり、長尾村会解散の請求を提出し、長尾村選挙管理委員会は十二日これを受理した。また亀島は九名の者とともに、十五日兵庫県知事に対し、長尾村会の伊丹市への合併決議についての事情を述べ、これの処置については万全を期せられたいと歎願書を出し、他方長尾村政刷新期成同盟(仮称)設立を、五名の者とともによびかけた。その目的は、無為無策の村長追放、政治ボス売村奴撲滅、明朗なる民主政治の昂揚、基本的人権の尊重、新制中学校建設促進、平和長尾の建設であった。
長尾村会解散請求の受理に関しては、解散反対の森川三男外一二名が弁護士山本悦治を代理人として異議申立をしていたが、署名簿のなかに同一筆蹟のものが多数あるという理由で、二月二十六日に解散請求書受理は取消され、村会解散請求は認められなかった。
このあと、二月二十八日伊丹市長と長尾村長は、両者合併の申請を兵庫県知事に提出した。しかしこの申請は県会へ提出されなかった。