人口急増対策としての公共施設の建設、たとえば学校・幼稚園・保育所・道路および上下水道の建設と、福祉社会への要請にもとづくいわゆる「福祉サービス」は市財政の膨張をもたらした。財政規模は、昭和四十二年度の一般会計歳出決算額は二四億二六〇〇万円であるが、三年後の四十五年度決算額は四八億八九〇〇万円と倍増した。その後も対前年増加率二九・〇%、三六・八%、三七・五%、三四・三%と増加して、四十九年度には実に一五九億三五〇〇万円となり四十五年度の三倍をこえた。
ところが、歳入に目を転じると、現行制度の下では、その伸張性に限界があることはあきらかである。たしかに宝塚市財政の中心的財源である市税収入は人口増加と所得水準の上昇、しかも比較的中・高所得層が多いため、伸びが著しい。しかし四十二年度の一四億九六〇〇万円から一九・〇%、二〇・六%、二四・〇%と増加した四十五年度までと、その後二四・〇%、二八・二%、二四・三%、三四・一%、三〇・五%と増加した四十年代後半では事情が異なっている。すなわち、後者の増加率では歳出の増加率をかなり下回るのである。
自主財源である市税収入の増加が歳出の増加に追いつかないと、宝塚市のような「不交付団体」では地方交付税に依存できないだけに、かえって財政状況は悪化する。いきおい国庫支出金や起債に依存することになるが、前者は「超過負担」問題があり、後者は公債費比率を上昇させて財政硬直化をまねくおそれもある。第二節でみた競馬場やゴルフ場が潜在的財源であるにもかかわらず、制度上どうにもならないのである。
結局は、限られた財源で効率的な財政運営の方策をとるしかない。そのためには行政需要から優先順位を選択するとともに、市民の合意と理解のうえで歳入増大の途を見出すことしかない。もちろん、国に対して制度改正を強く働きかけるべきであろうが、国に責任があると声を大にするだけでは、解決の方向は見出せないのではなかろうか。