(6)大坂の観光名所木村蒹葭堂について

 木村蒹葭堂(けんかどう)(1736~1802)は大坂の人で、本業の酒造業のかたわら、本草学を小野蘭山に学び、画は池大雅に山水を学んで一家を成し、詩文にも長じた文人であった。
 一方、書画・典籍・標本類の収集は全国的に有名で海外にも知られ、日々訪問客が絶えず、今日の博物館の様相を呈していた。
 治助たちは大坂に3日間滞在し、3日目に伏見町淀や橘南にあった木村蒹葭堂を訪ねて対面しているが、関心はそれほど深くはなかったようである。
 
 日記には
 
一 木村氏 対面
 
とのみ記し、音物も
 
一 箸 ひし十膳入二袋 木村太吉郎隠居
            ケンクハ堂ヘ
            大七ト仲間持参
 
と額面が割と小さい。