写真 諸国関所通行書留文書 |
江戸幕府は諸大名の謀叛を警戒し、江戸へ入る旅人等による鉄砲の持ち込みや諸役に付く大名の妻女が国元への脱出・逃亡を防ぐため、箱根・碓氷・栗橋など諸国の要所・国境に関所を設けて取り締まりを厳しくした。
本史料は、東山道の近江・美濃・飛騨・上野・下野・出羽・陸奥と東海道の常陸・下総・上総・武蔵・甲斐・伊豆・駿河・遠江・三河、北陸道の能登・越中・越後の各諸国の略図を記すとともに、その諸国街道における関所通行に際し「入鉄砲出女」禁止に関する関所の取り決め事について、各印別に覚え書きとして書き留めた江戸期の文書である。
関所の数と印の取り決め箇所数の相違が朱書きされており、各諸国の関所通行取り決め事が分かる当時の貴重な文書史料である。
[釈文]
〈朱書〉二十一ヶ所と有之候得共、絵図面ニ十九ヶ所より外無之、認落由候歟。
朱にて認候御関所二十一ヶ所ハ、女ハ御留守居手形にて通し、鉄砲ハ御老中方御証文
又ハ品ニ寄、領主証文にても相通し候。但、此の内、箱根御関所ハ鉄砲改無之。
〈朱書〉八ヶ所と有之候得共、絵図面ニ六ヶ所より外無之。印八ヶ所ハ、女武具一切不相通候。○印三ヶ所ハ、女ハ一切不相通、鉄砲ハ相改申候。
△印十二ヶ所ハ、女武具鉄砲共ニ相改申候。□印六ヶ所ハ、女ハ相改鉄砲ハ相改不申候。
□印七ヶ所ハ、女鉄砲ハ相通不申候。尤難故他ノ者ハ往来一切無し。
右改方書面の通に御座候。女鉄砲相通候。証文出候所々之儀并所之女御関所、
出入之訳ハ、帳面ニ委敷記有之候。
(史料名、装訂、説明文は東等寺冬任文庫史料解説による)
東山道、東海道、北陸道諸国の略図を記し、右には街道における関所通行の取り決め事について、各印別に書き留められている。