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(2)「街道編」の概要

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 掲載内容は次のとおりである。
   第一章 飛騨の街道を行く
   第二章 明治~大正時代の街道、附図
   第三章 江戸時代の街道絵図
   第四章 村絵図
   第五章 口留番所
   第六章 巡見使
   第七章 旅日記、宿泊
   第八章 現在の道路
 
 全体
  高山市域の街道を知るには、飛騨国、飛騨地域全体の中での交通の動き、人々の動き、街道の整備経緯などを捕えて核心に迫る必要があり、飛騨市、下呂市、白川村をも視野に入れての記述としている。
  本書に掲載した地図・絵図は歴史地理の情報が豊富であり、また街道に関連する古文書類は東西南北の主要道路の変遷、街道沿いの集落の変遷、番所の位置などの様子が把握される。これにより、金森時代、幕府直轄地時代、近現代それぞれにおける街道史を知ることができよう。
  本書が高山市の街道を知ろうとする研究者、教育現場、地域の活性化を目指す方々、史跡等を守り続けておられる保存会など関係諸氏に今後活用されることと思う。
 
 第一章 飛騨の街道を行く
  車で回らなければならないが、現在訪れることができる、旧街道筋の見所を最初に紹介している。現在の国道、県道、市道沿いには飛騨国四一五カ村の江戸時代集落が今でも存在(一部廃村)しているが、その集落内には歴史街道が通っている。その主な街道のなかで史跡、景観地、街道に関わる歴史を紹介した。
 
 第二章 明治~大正時代の街道、附図
  明治末~大正時代にかけて作られた国土地理院の五万分の一の地形図(昭和初めに改定された地図も含まれる)を四枚貼り合わせて、明治末当時の主要道路を色付けした。
  明治末~大正時代当時における主要道路のルートと集落、河川名、峠名などを読み取りやすいよう色付けし、江戸時代の様相が残っている状況を見てとることができよう。
  この四枚貼り合わせの地図からは、主要街道ルート、里道、御嶽や乗鞍への登山道、「在所」の名称、役場所在地、県道の指定状況などが分る好資料である。若干の解説を加えた。
 
 第三章 江戸時代の街道絵図
  飛騨の国絵図には、金森時代、幕府直轄地時代、明治時代のものがあるが、主要な国絵図を掲載した。高山から延びる東西南北の街道や集落の名称、隣国までの距離、囗留番所の位置と名称などが分る。
 
 第四章 村絵図
  飛騨の現在の集落は、江戸時代にあった四一五カ村が基になっている。この村々は、江戸時代に整備された街道沿いに開けた集落が多く、街道と深いつながりをもって発展をしてきた。
  各集落における、集落を通っている街道と家屋、谷などの様子がわかるのが江戸時代の村絵図である。この村絵図は全箇村存在しないが、県歴史資料館、高山市教育委員会所蔵史料に一部が残っているので、現存する村絵図を本書に紹介した。
  村絵図の描き方に統一性はなく、精度には差がある。描かれている家の数は実態に合っていないと思われるが、概ねの位置は読み取ることができよう。
 
 第五章 口留番所
  口留番所は、高山城下町から東西南北にのびている街道沿いに設けられており、隣国に近い方に寄っている。
  飛騨国内での口役銀徴収のため、関所とは呼称されていない。下巻第五章第一節三頁にその位置図を記している。
  街道を通った物資は、飛騨国内の口留番所を通過した集計記録によって知ることができる。飛騨国に輸入された物資と飛騨国から輸出された物資の区別がされていないが、林氏の詳細にわたる調査分析により、飛騨に持ち込まれた物資等の一覧表が作製されている。
  東西南北の街道における流通物資の違い、量の多少、時期的に流通量の変化などを分析し、比較した。今回、初めて口留番所の総括的な統計資料が作製され、江戸時代における物流の様相が明らかになった。
 
 第六章 巡見使
  街道を通過した公人の記録として巡見使の関係文書がある。これには、巡見使御一行にかかる必要経費内訳と、各村々に割りあてた分担金明細があり、集落社会における統一された組織体制が伺われる。高根地域、丹生川地域の資料を紹介した。
 
 第七章 旅日記、宿泊
  旅日記関係資料の一覧、明治時代の外国人の宿泊者名簿を掲載した。また、丹生川地域の江戸時代医師・大谷玉林が四国八十八カ所を巡った時の詳細なる旅日記を紹介している。
 
 第八章 現在の道路
  現在の国道、県道、市道の道路台帳抜粋、飛騨地域の「道の駅」一覧表を資料として第八章に掲載した。
 
 本書の編成にあたり、著述本、論文、街道等調査成果などを整理して多くを掲載したが、時間的制約の中で、充分な内容とはなっていないところもある。今後の精査を期待する。
 
 本書が広く教育現場、集落活性化のために使用されるよう、写真、図面等を多く掲載した。
 
 紙面の編集にあたっては、極力見やすさを優先し、空白欄がある程度出ても詰めずに、表題が頁の右側に来るよう配慮している。
 
 写真には、章、節、(番号)の番号を利用して通番を付した。
  〈例〉第二章第一節(1)
              写真番号2-1-(1)-通番
 
 引用文献、参考文献は、文中に『書名』を記載し、発行年等は上巻の巻頭〔6〕~〔9〕頁、一三四頁に記載した。
 
 文章中の敬称は全て省略させていただいた。
 
 監修、編纂方針等の指導を高山市史編纂委員長松田之利氏、高山市文化財審議会会長の高橋宏之氏に依頼した。
 
 建物の調査及び原稿の校正については、街道、史跡等の保存会、文化財等の所有者、管理者の方々に多大なる御協力、御支援をいただいた。ここに深く感謝申し上げます。