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[飛騨の鰤市]

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1-1-(4)-2 塩ぶり市

 三万カーン、四万カーンと威勢の良い競り売の掛け声が高山の公設市場内にひびく。十二月二十四日はブリが競りにかけられる日で、昔は十二月最初の亥の日に開くのが恒例であった。
 ブリはアジ科に属し、小さいときはモジャコ→ツバイソ→(体長十センチ程の一才魚)、大きくなるにつれてコズクラ(十五センチ程)→フクラギ(三十センチ程の二才魚)→ガンド(五十~六十センチ程の三才魚)→コブリ(六十五センチ以上の四才魚、体重四キロ以上)→オオブリ(体長一メートル以上、体重十キロ以上)と名前を変え、出世魚と呼ばれる。産卵は三~五月に九州あたりで行なわれ、稚魚(モジャコ)は流れ藻とともに北上する。八月頃ツバイソになり、その後成長を続け、潮の流れに乗ってカムチャッカ半島から台湾までの海を回遊しながら成長し、北の荒海でもまれて成長して、富山湾に入ってくる。静かな湾内で脂を乗せてくるのが十一月の終わり頃で、ブリ漁最盛期を迎える。十二月までに獲れるブリは脂が乗っておいしいのである。ハマチはどこら辺の順位に入るのかと言ったら、氷見の人に叱られた。何故かと聞くと、ハマチは養殖ものを言うんだという。富山の料亭では、御品書表示が氷見ブリばかりで、ハマチとは記していない。氷見ブリブランドの重要さが表われている。
 この出世魚を十二月三十一日の年取りに食べ、縁起をかつぐ。大晦日に、家族水いらずでたくさんの御馳走を用意し、一つ歳をとったと祝う。