ビューア該当ページ

[平湯峠をゆくニッサン90型バス]

104 ~ 105 / 289ページ

1-1-(9)-28 ニッサン90型バス

 1-1-(9)-28は、昭和十年代前半頃の平湯峠をゆくニッサン(現日産)の90型バスである。この90型バスは、昭和十二年から作られたもので、飛騨へは早くから導入された。
 当時の高山をみると、昭和十二年、高山駅に登山案内所が設けられ、昭和十三年十月五日には長野へ抜ける安房峠が開通し、湯の町平湯がおおいにわき立っている。平湯・安房・松本へと自動車道が整備され躍進の時代を迎えたのである。写真のバスは、バス運送の初期を物語る車両で、昭和十六年以降の戦時色により早く衰退をしていった型式である。
 写真中、道路沿いに一本の標柱がある。それには、「従是(これより)吉城郡上宝村、町村界杭-吉城郡上宝村-大野郡丹生川村」とある。丹生川村と上宝村の村境を通過する地点での撮影であり、両側にササが生い茂り、山々は霧にかすむ。トウヒなどの亜高山性針葉樹林帯が広がり、平湯峠の自然が感じられる。
 その後の昭和十六年、乗鞍岳へあがる軍用道路が着工となり、山頂近くに陸軍航空研究所の発動機試験が行なわれた。
 昭和五十三年には平湯トンネル、平成九年には安房トンネルが開通、乗鞍スカイラインは昭和四十八年に舗装山岳道路として有料オープンしている。平湯峠付近は目まぐるしく時代の波を受け続けている。