文久元年五月分 下原口御番所口役銀取立の品目
五月朔日
中厨子(ちゅうずし・小型の仏壇か)2・小間物(こまもの)5・諸紙(しょし)・古手(ふるて・古着)2・
木綿(もめん)3・木綿縞(もめんじま)2・海羅(ふのり)2・帷子(かたびら)・上唐櫃(じょうからびつ)
同 二日
木綿
同 三日
茶碗(ちゃわん)・売薬(ばいやく)・中厨子・黄綿(きわた)・小間物・木綿・干蒟蒻(ほしこんにゃく)・
薯蕷(じねんじょ・山の芋)
同 四日
木綿・木綿縞・小間物・海羅(ふのり)・帷子(かたびら)・砂糖(さとう)
同 五日
木綿・上唐櫃
同 六日
小間物・薯蕷
同 七日
小間物
同 八日
縒(より・糸をより合わせたもの、ひも)
同 九日
茶碗・大根種・古手・木綿・木綿縞・小間物・砂糖・果子(かし・菓子)
同 十日
果子・糸枠(いとわく)・麻苧(あさお)
同十一日
瀬戸片口(せとかたくち)・天目(てんもく・湯飲み茶碗)・甲鉢(かぶとばち)・絹篩(きぬふるい)・
馬の尾篩(うまのおふるい)・竹篩(たけふるい)・茶碗・古手・木綿・木綿縞・小間物・海羅・帷子・諸紙
同十二日
小間物・茶碗・縒・茶碗
同十三日
果子2・薯蕷(じねんじょ・自然薯・山芋)
同十四日
小梨子(こなし)
同十五日
若和布(わかめ)・蕨粉(わらびこ)2・小間物2・木綿2・木綿縞2・海羅(ふのり)・筆(ふで)・墨(すみ)・帷子2・
大根種・果子
同十六日
蚕種(かいこだね)
同十七日
小梨子・上膳2・売薬
同十八日
小なし・蚕種・鰹節(かつおぶし)・茶碗2・大根種・果子・諸紙・古手・小間物
同十九日
縒・蚕種・山の芋・古手・酒・小間物2・中厨子・木綿・木綿縞・帷子
同 廿日
蚕種・小なし・小間物2・米
同廿一日
古手・小間物2・茶碗・薯蕷(じねんじょ)・手習筆(てならいふで)・絹篩・馬の毛篩(けふるい)・
竹篩(たけふるい)
同廿二日
茶碗・素麺(そうめん)・諸紙・古手
同廿三日
灰汁灰(あくはい)
同廿四日
中厨子3・小間物3・小梨子・瀬戸片口2・天目2・甲鉢・山の芋・貫綿(ぬきわた・古綿)・茄子(なす)・木綿・
木綿縞・ふのり・手習筆・帷子(かたびら)・甲鉢・茶碗
同廿五日
茶碗2・酒・木綿2・木綿縞2・小間物2・ふのり・帷子2・瀬戸片口・天目・甲鉢・菓子・燈油(ともしあぶら)・酢(す)
同廿六日
瀬戸片口・天目・甲鉢・小間物・合羽・中茶・絹篩・馬の尾篩(ふるい)
同廿七日
縒(より)・果子・縁取(ふちどり・縁取莚)・畳表(たたみおもて)・茶碗・古手2・砂糖・木綿・木綿縞・
小間物3・帷子
同廿八日
酒2・米・蛹(さなぎ・繭)・木綿・木綿縞・小間物2・海羅・帷子・溜(たまり)
同廿九日
蝋燭(ろうそく)・小間物2・山の芋・生姜・あらめ2・瀬戸片口・天目・甲鉢・菓子・木綿・木綿縞・帷子・諸紙
同 晦日
瀬戸片口・天目・甲鉢・売薬・□□□・ふのり2・茶碗・干ぜんまい(ほしぜんまい)・若和布(わかめ)・
中厨子2・諸紙2・傘・中茶・古手・中厨子・ふのり2・米2・木綿・木綿縞・小間物・手習筆・
帷子(かたびら)・鉛
5-2-(2)-1 下原口御番所口役銀取立帳品目一覧表 文久元年(1861)5月分 |
◎ 下原口を通って飛騨へ運ばれたと考えられるもの (一)食品 | |||||
品 目 | 記帳件数 | 数量合 | 口役銀合 | 主な荷主名・出身地名等 | |
1 | 砂糖 | 3 | 228斤(きん) | 40匁6分7厘 | 久々野村3人 |
2 | 菓子 | 10 | 105貫(かんめ) | 30匁4分6厘 | 久々野村兵助・同清蔵・渚村藤吉・引下村重郎次各20貫ほか |
3 | 米 | 4 | 10石3斗 | 20匁4分6厘 | 下原町村・中切村ほか |
4 | 素麺(そうめん) | 1 | 8貫 | 2匁3分6厘 | 見座村次作1人 |
5 | 酒 | 4 | 5斗5升 | 4匁9分 | 久々野村利平次4斗。ほか3名不明 |
6 | 溜り(たまり) | 1 | 4斗 | 2匁8分4厘 | 久々野村彦三郎1人 |
7 | 酢(す) | 1 | 5升 | 4分5厘 | 久々野村新六1人 |
8 | 中茶(ちゅうちゃ) | 2 | 123斤 | 8匁7分 厘 | 柳島村平右エ門115斤ほか |
9 | あらめ | 3 | 72.5貫 | 3匁6分8厘 | 見座・黒川・久々野村各1人 |
10 | わかめ | 1 | 14貫 | 7分6厘 | 名古屋1人 |
11 | 鰹節(かつおぶし) | 1 | 70本 | 1匁2分6厘 | 尾州びわじま1人 |
12 | 小梨子(こなし) | 5 | 9,000こ | 6匁4分8厘 | 川辺4,250・名古屋4,000ほか |
13 | 生姜(しょうが) | 1 | 1斗 | 4分7厘 | 尾州1人 |
14 | 茄子(なす) | 1 | 500こ | 9分 | 名古屋1人 |
15 | 大根種(だいこんだね) | 4 | 3斗 | 27匁5分4厘 | 渚村音吉・引下村市郎次各4斗。ほか越中2人 |
備考 | ○砂糖の移入量が大きい。荷主は久々野村となっているが、下原口を通って飛騨へ搬入された品物はほとんど白木を美濃上有知へ運んだ久々野村を中心とする馬方が帰り荷として運んだものと考えられる。 | ||||
◎ 同上 (二)衣料 | |||||
品 目 | 記帳件数 | 数量合 | 口役銀合 | 主な荷主名・出身地名等 | |
1 | 古手(ふるて) | 12 | 444枚と5ッ | 139匁3分8厘 | 引下村伝右エ門114枚・久々野村利平次38枚×2。ほか |
2 | 木綿(もめん) | 20 | 417反 | 91匁9分 | 柳島村長三郎66反・久々野村利平次52反。ほか久々野村9人・ 小坊・渚村・高山町・名古屋など |
3 | 木綿縞(もめんじま) | 16 | 310反 | 55匁5分3厘 | 柳島村長三郎30反・久々野村利平次24反。ほか久々野村9人・ 小坊村・渚村 |
4 | 帷子(かたびら) | 14 | 207枚 | 55匁 2厘 | 柳島村長三郎21枚・久々野村利平次18枚。ほか久々野村8人・ 小坊・渚村 |
5 | 麻苧(あさお) | 1 | 20貫 | 22匁4分8厘 | 引下村作右エ門1人 |
6 | 黄綿(きわた) | 2 | 2.5貫 | 1分5厘 | 高山町2人 |
備考 | ○古手=古着。江戸時代は古手商いが盛んであった。飛騨の衣料は麻が中心で、木綿の栽培は高冷地には適さなかったので、値段が高く、古手や古綿の商いを生業とする人々が多かった。 | ||||
◎ 同上 (三)小間物・雑貨・その他 | |||||
品 目 | 記帳件数 | 数量合 | 口役銀合 | 主な荷主名・出身地名等 | |
1 | 小間物 | 35 | 195.7貫 | 119匁4分4厘 | 久々野村14人・高山町7人(空町・新町・向町)など。 ほかに名古屋・関・山名 |
2 | 上膳(じょうぜん) | 3 | 498枚 | 74匁7分 | 久々野村清蔵468枚ほか |
3 | 中厨子(ちゅうずし) | 8 | 8ッ | 48匁 | 高山町5人(八幡町・新町)・久々野村2人・柳島村1人 |
4 | 上唐櫃(じょうからびつ) | 2 | 3ッ | 3匁6分 | 久々野村利平次2ッ・高山新町良右エ門1ッ |
5 | 諸紙(しょし) | 8 | 30.3貫 | 12匁8分9厘 | 引下村市次郎15貫・久々野村清蔵6貫。ほか久々野・小坊・見座・高山 |
6 | 筆 | 4 | 350対 | 6匁3分 | 柳島村長三郎ほか久々野村3人 |
7 | 墨 | 1 | 60挺 | 7分8厘 | 柳島村長三郎1人 |
8 | 燈油(ともしあぶら) | 1 | 3斗 | 8匁 1厘 | 久々野村長四郎1人 |
9 | 蝋燭(ろうそく) | 1 | 2.7貫 | 3匁5分8厘 | 京都の3人1組 |
10 | 茶碗 | 12 | 480こ | 12匁 | 越中7人・尾州4人・小坊村1人 |
11 | 天目(てんもく) | 7 | 1,400こ | 18匁2分 | 下原町村助四郎200×2。ほか久々野・中切・小坊村 |
12 | 瀬戸片口(せとかたくち) | 7 | 210こ | 5匁6分7厘 | 下原町村助四郎30×2。ほか久々野・中切・小坊村 |
13 | 甲鉢(かぶとばち) | 7 | 140こ | 8匁7分 | 下原町村助四郎20×2。ほか久々野・中切・小坊村 |
14 | 海羅(ふのり) | 10 | 80貫 | 30匁7分6厘 | 柳島村2人各12貫。ほか久々野村5人・小坊村2人・越中1人 |
15 | 縒(より) | 4 | 720筋 | 31匁6分7厘 | 尾張びわじまのほか三河・美濃の人々 |
16 | 畳表(たたみおもて) | 1 | 80枚 | 5匁6分8厘 | 無数河村長四郎1人 |
17 | 傘(からかさ) | 1 | 5本 | 7分8厘 | 久々野村兵助1人 |
18 | 合羽(かっぱ) | 1 | 80枚 | 5匁6分8厘 | 越中高岡 |
19 | 絹篩(きぬふるい) | 1 | 5ッ | 4分5厘 | 尾張清須1人 |
20 | 馬の尾篩(うまのおふるい) | 1 | 10 | 6分2厘 | 尾張清須1人 |
21 | 竹篩(たけふるい) | 1 | 15 | 4分1厘 | 尾張清須1人 |
備考 | ○天目は茶の湯で用いる天目茶碗ではなく、湯飲み茶碗のことである。数量も多く、口役銀も安い。 | ||||
○縒が何に使われたか不明。 | |||||
◎ 売薬ほか、移入・移出の区別がつかないもの | |||||
品 目 | 記帳件数 | 数量合 | 口役銀合 | 主な荷主名・出身地名等 | |
1 | 売薬(ばいやく) | 3 | 1.2貫 | 9分4厘 | 越中富山1人・名古屋2人 |
2 | 蚕種(かいこだね) | 4 | 19枚 | 1匁9分2厘 | 濃州神淵ほか |
3 | 蛹(さなぎ) | 1 | 3斗 | 1匁5分 | 国名不明1人 |
4 | 糸枠(いとわく) | 1 | 25 | 1匁 | 引下村長三郎1人 |
備考 | ○蛹=まゆ。まゆは重さのほか、枡で計る場合もあった。 | ||||
○蚕種の産地はよくわからない。この時代、高山でも蚕種は生産されていた。 | |||||
◎ 飛騨から下原口を通って美濃方面へ売り出されたと考えられるもの | |||||
品 目 | 記帳件数 | 数量合 | 口役銀合 | 主な荷主名・出身地名等 | |
1 | 蕨粉(わらびこ) | 2 | 2石4斗 | 9匁5分 | 小瀬が洞村・西洞村各1人 |
2 | 薯蕷(じねんじょ) | 7 | 42貫 | 13匁4分2厘 | 下原町村勘助15貫・同村半兵衛15貫。名古屋3人・尾州2人 |
3 | 干ぜんまい(ほしぜんまい) | 1 | 5貫 | 7分5厘 | 名古屋商人1人 |
4 | 灰汁灰(あくはい) | 1 | 5斗4升 | 7分 | 久々野村為七1人 |
5 | 鉛(なまり) | 1 | 80貫 | 16匁 | 一之宿村清左エ門1人 |
備考 | ○鉛の荷主一之宿村清左エ門は広く鉱山・白木等の事業を手がける。運搬は馬方等に任せている。 | ||||
○灰汁灰はアクを取る灰。国外から灰を買い入れるとは考えられないので、一応移出品とみた。 | |||||
◎ 枠外に記載されている無役荷物(白木) | |||||
品目(長さ) | 数量 | 願人 | 備考 | ||
1 | 唐桧(しらびそ) 葺榑(ふきくれ)長さ1尺5寸 | 109束 | 一之宿村 清左衛門 | 葺榑は白木類のうち | |
2 | 同 葺榑長さ4尺3寸 | 31束 | 同人 | 送り先は不明 | |
3 | 同 葺榑長さ3尺2寸 | 51束 | 同人 | ||
4 | 同 葺榑長さ3尺8寸 | 149束 | 同人 | ||
5 | 同 葺榑長さ1尺7寸 | 57束 | 同人 | ||
6 | 同 葺榑長さ4尺3寸 | 49束 | 同人 | ||
7 | 栃椀木地(とちわんきじ) | 85箇(か) | 古川町方 和助 | この椀木地は紀州黒江へ送られた | |
備考 | ○一之宿村清左衛門は前出。 ○願人は白木稼ぎを願い出た者の意。稼ぎ人。 | ||||
○白木・椀木地稼ぎは事前に御役所の許可を得、運上金を納めている。 | |||||
○椀木地は102貝で1箇。85箇は8,160貝となる。 |