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①文政二年(一八一九)十二月 上ヶ洞口御番所口役銀取立帳

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 降積雪期の口役銀取立帳であるため、物資の通行量は少なく、口役荷物(口役銀を納めなければならない荷物)も、古手(ふるて)・小間物(こまもの)・櫛(くし)・干瓢(かんぴょう)・刻煙草(きざみたばこ)・蕨の花(わらびのはな)(蕨粉)・干蕨(ほしわらび)など軽い品目の記帳が多い。
 その中で目を引くのは玉子の移入が意外に多いことである。
 また、遭難の危険性が高いため、通り荷物のない日が、一か月のうち十九日に及んでいる。
 ちなみに、当時の経済政策として、御役所の許可を得て無税となっていた穀類(米・麦・稗・栗・大豆)や塩、また、生糸・白木(しらき)・椀木地(わんきじ)など、仲買人が所定の手続きを通して御役所へ事前に運上金を上納しているものは、口番所を通行する場合、改めて口役銀を納める必要はなかった。
 従って、それらの荷物は口番所を通ったとしても、その記録はほとんど記録されていない。そのため、どこの口役銀取立帳も移入物品の件数・数量が目立って多くなっている。
 安政四年(一八五七)に郡中会所などが調査した結果(『大野郡史』)によると、国外買入額が国産物移出額を数千両上廻っているのも事実であるが、その差を埋めたのは、杣・黒鍬・入鍛冶などの出稼ぎであったと考えられている。
 
    十二月二日
・古手二ツ、抜手綿(ぬきてわた・古綿)三ツ、玉子二百
    同  三日
・櫛八拾具、小間物五百目、売糸三百目
    同  四日
・櫛五百具、小間物三百目、蕨の花五石六斗、干瓢壱貫七百目、刻煙草八百目、弐升なべ弐ツ、蕨の花弐斗五升
    同  九日
・刻煙草七百目、干蕨(ほしわらび)六貫目、山葵(わさび)弐斗、胡麻(ごま)五升、玉子百、細魚三百、
 刻煙草五百目、屑紙(くずがみ)弐貫目
    同 十三日
・玉子弐百
    同  廿日
・玉子百、干瓢(かんぴょう)壱貫五百目
    同 廿一日
・蕨の花三石六斗、蕎麦六斗四升
    同 廿四日
・酢四升
    同 廿五日
・櫛形木千弐百、飯拾、面桶三拾
    同 廿六日
・絸志け(まゆしけ)弐貫目、玉子弐百
 
  口役銀
   合 銀七拾匁弐厘
 
 外ニ                    仲買人
一唐桧葺榑(ふきくれ)七拾弐束        大古井村
                       伝十郎