口留御番所から提出される月別の「口役銀取立帳」を品目別に集計し、その一カ年分を一冊にまとめたものが「口役荷物類寄帳」である。
「取立帳」が一日ごとに荷主の名前・出身地まで細かく記録しているのに対して、「類寄帳」は細部を省いて、月ごとの口役銀の増減を把握することを第一の目的としている。
御厩野口は、幕領となった後、飛騨と江戸とを結ぶ街道の要地となり、物資の流通量も増え、特に米については嘉永七年(一八五四)一カ年に六〇五石余がこの御厩野口を通って飛騨へ入っている。
また、別紙一覧表5-2-(9)-1に示したように、実に多様な物資が大量に往き来して(大部分は入荷物(いりにもつ))いることがわかる。
5-2-(9)-1 嘉永7年 (1854) 御厩野口口役荷物類寄帳集計一覧 |
口役銀月別集計 | 米移入高月別集計 | 口役銀納高からみた通行物品 | ||||
(毎月1位) | 2位 | 3位 | ||||
1月 | 110匁7分6厘 | 22石1斗5升 | 薬種 | 23貫400 | 菓子 | 34貫 |
2月 | 227匁9分1厘 | 32石9斗4升 | 刻煙草 | 25貫200 | 小間物 | 34貫400 |
3月 | 208匁2分6厘 | 46石9斗4升 | 干しめじ | 40貫500 | 菓子 | 31貫800 |
4月 | 356匁1分9厘 | 52石2斗0升 | 干しめじ | 124貫900 | 天目 | 1,138こ |
5月 | 146匁1分8厘 | 18石4斗3升 | 小間物 | 58貫800 | 桑葉 | 1,219貫 |
6月 | 132匁7分9厘 | 35石3斗8升 | 桑葉 | 1,321貫 | 諸紙 | 24貫 |
7月 | 190匁0分5厘 | 14石7斗9升 | 櫛 | 4,320貝 | 入蛹 | 8石2斗 |
閏7月 | 60匁3分9厘 | 2石9斗3升 | 草刈り鎌 | 450枚 | 屑紙 | 13貫500 |
8月 | 201匁8分8厘 | 13石1斗2升 | 櫛 | 2,415貝 | 胡麻 | 1石5斗7升 |
9月 | 238匁9分4厘 | 14石4斗1升 | 干しめじ | 115貫300 | 屑紙 | 23貫500 |
10月 | 413匁1分6厘 | 98石3斗2升 | 干しめじ | 74貫600 | 天目 | 1,624こ |
11月 | 453匁4分5厘 | 162石1斗2升 | 串柿 | 68束 | 胡麻 | 1石4斗 |
12月 | 406匁9分1厘 | 91石5斗2升 | 小間物 | 49貫500 | 塩硝 | 75斤 |
都合 | 3貫146匁9分6厘 | 605石2斗5升 | 米の口役銀は1石に付き約銀2匁に上昇。 米は閏7月を除いて、毎月口役銀のトップを占めていた。 | |||
○類寄帳にみられる主な品目 | ||||||
米・薬種・売薬・小間物・刻煙草・入煙草・干しめじ・菓子・諸紙・屑紙・砂糖・天目・茶碗・火打茸・生姜・古鉄・古銅・片口・木綿・黄綿・大麸・中馬・櫛・入糸・ 桧笠・桑葉・蚕種・鰹節・中茶・入蛹・素麺・草刈鎌・大梨子・むしろ・干こんにゃく・古手・越中椀・酢・竹篩・ぬり折敷・硯箱・重箱・蕨の粉・干じころ・指枕・ 夜着・胡麻・細魚・田作・傘・灰汁灰・瀬戸皿・みかん・麻苧・芍薬・猪肉・猪皮・溜り |