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[小白川口御番所口役銀取立帳]

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岐阜県歴史資料館・飛騨郡代高山陣屋文書1-55-51 (5-1-1 図 ⑭)

5-2-(18)-1 小白川口御番所口役銀取立帳

 小白川口はいわゆる白川街道の北端に位置し、越中の城ヶ端(じょうがはる・城端(しょうはる)という文字もみえる)・高岡へ通じる要所に位置している。
 かつて、高山に金森氏が居城を構える以前は、飛騨の中心は白川郷にあったと言われ、人々の通行、物資の交易も盛んであった。
 江戸時代の終わりにあたる安政三年(一八五六)九月分、元治元年(一八六四)四月分の「小白川口口役銀取立帳」は、生糸・繭・塩といった重要物資の通行を記載しなかったので、一見ものさびしい感じはするが、皮栗・舞茸(まいたけ)・干しめじ・干ちかふ(干じこう)等、いかにも山村の生業のあり方をしのばせるものがある。
 この取立帳の荷主をみると、九〇パーセントまでが越中城ヶ端の人々で、地元では飯島・馬狩・有巣ヶ原・萩町の人々がわずかに見える。
 二冊の口役銀の取立額はそれぞれ
  安政三年九月分
    二三六匁三分八厘
  元治元年四月分
    一四六匁四分四厘
となっており、取立が半減した元治元年の取立帳の末尾には、次のような下ヶ札が張ってある。
 「昨年の大雪のため道路が崩れ、その上、今になっても越中赤尾では雪が消え残っていて牛足も立ち難く、諸荷物の通行が減少しています。」
 大自然の厳しさの中で生きている人々の姿が目に見えるようである。
 
 
5-2-(18)-2 小白川口御番所口役銀取立品目一覧表 安政3年(1856)9月分
 小白川口から越中方面へ売り出されたと考えられるもの
 品 目記帳件数数量合口役銀合主な荷主の名前・出身地等
1出煙草(でたばこ)16斤3分2厘越中城端与惣右衛門
2麻苧(あさお)21貫500目1匁6分4厘飯島村弥次郎・越中城端惣助
3皮栗(かわぐり)28斗3升1匁3分1厘越中城端喜助・越中城端小右衛門
4舞茸(まいたけ)324貫1匁4分4厘越中城端小兵衛12貫・同文蔵6貫・同吉右エ門6貫
5干舞茸(ほしまいたけ)26斗9分5厘越中城端仁兵衛・越中城端惣右衛門
6干しめじ(ほししめじ)24貫108目4匁1分2厘越中城端仁兵衛・越中城端惣右衛門
7干ちかふ(ほしじこう)2530目5分3厘有家ヶ原村藤八・有家ヶ原飯島村孫次郎
8絸ひび(まゆひび)1500目2分4厘越中城端仁兵衛
9中馬(ちゅうま)22疋1匁3分2厘越中赤尾甚助・(白川郷)馬狩村甚蔵
備考○ちかふ=じこう。(茸の一種。)   ○城ヶ端と城端は城端とした。
○絸=まゆ。絸ひびは、繭から糸をとったあとのひびではなく、最も品質の劣る繭のことである。
○出煙草は入煙草に対することばで、煙草は飛騨へ入るばかりでなく国外へも売り出されていたことがわかる。
 入煙草は上等品。

 小白川口を通って越中側から飛騨へ入ったと考えられるもの (一)食品
 品 目記帳件数数量合口役銀合主な荷主の名前・出身地等
11665石7斗1升138匁3分9厘越中城端喜助3件23石8斗ほか越中側8人・飛騨側5人
2味噌22斗2升5合1匁4分1厘越中城端喜助・清助
343斗3升2匁5分5厘越中城端商人4人
4糀(こうじ)56石6升9匁9分  越中城端喜助4石8斗
5飴(あめ)213貫200目2匁7分9厘越中城端右衛門11貫200目・同仁兵衛2貫目
6鰹魚(かつおぎょ)338本1匁  3厘越中城端清助・宗右衛門
7小鯖(こさば)13008分  越中城端小兵衛
8細魚(さいぎょ)68貫400目22匁5分7厘越中城端文右衛門・作次郎・喜助・吉右衛門ほか
9田作(たつくり)41石3斗5升4匁7分3厘越中城端小兵衛・仁兵衛・文右衛門・宗右衛門
10刻こんぶ(きざみこんぶ)13貫9分9厘越中城端小右衛門
備考○鰹魚は38本とあるので鰹節かもしれない。
○移入品の大部分を城端(城ヶ端)の商人が荷主となっている。
 中でも城端喜助は移入品の総量のおよそ50%を占めている。

 同上 (二)小間物・雑貨・その他
 品 目記帳件数数量合口役銀合主な荷主の名前・出身地等
1売薬(ばいやく)77貫500目6匁   高山川原町三右衛門のほかは越中野尻・金屋・高岡の人
2蚕種(かいこだね)429枚3匁4分8厘越中井波佐兵衛・又吉・政右衛門
3小間物(こまもの)23貫1匁8分9厘越中城端小右衛門・右衛門
4木綿縞(もめんじま)12反3分6厘萩町村次郎兵衛
5菅笠(すげがさ)2180蓋(かい)7匁9分2厘越中城端佐兵衛・弥惣右衛門各90蓋
6笠(かさ)136蓋1匁5分8厘越中城端善右衛門
7笠緒(かさお)33,500筋(すじ)5匁2分5厘越中城端弥惣右衛門1000・作次郎1500
8御座(ござ)110枚4分4厘越中城端吉右衛門
9越中椀(えっちゅうわん)12束(そく)7分2厘越中城端惣右衛門
10薬箱(くすりばこ)11ッ1匁5分  越中野尻村孫右衛門
11蒲経巾(がまはばき)3180足4匁8分6厘 
12山刀(やまがたな)15丁6分7厘加州つるぎ村孫右衛門
13一升鍋(いっしょうなべ)17ッ9分1厘越中城端喜助
14二升鍋(にしょうなべ)16ッ1匁3分2厘越中城端喜助
15三升鍋(さんしょうなべ)12ッ7分2厘越中城端喜助
備考○薬箱1つで口役銀1匁5分は高い。   
○越中椀は珍しい記録である。   ○蒲経巾は蒲(がま)の脚巾(きゃはん)。
○売薬に高山川原町三右衛門がある。  

 品名および移出・移入が不確かな分
 品 目記帳件数数量合口役銀合主な荷主の名前・出身地等
1藳表3301匁5分  越中城端惣助・宗右エ門ほか
備考○藳表「藳表5ッ」「藳表15」「藳表10」とあるが単位が不明。藳俵かもしれない。他の口役銀取立帳には記帳例がなく、今のところどういうものかよくわからない。

 
 
5-2-(18)-3 小白川口御番所口役銀取立品目一覧表 元治元年(1864)4月分
    (但し、4月1日~16日分が欠損。17日~29日の13日分)

 小白川口を通って飛騨から越中方面へ売り出されたと考えられるもの
 品 目記帳件数数量合口役銀合主な荷主の名前・出身地等
1塩硝(えんしょう)275斤5匁3分4厘白川郷飯島村喜右エ門
2蝋(ろう)120斤7匁1分2厘越中城端惣右衛門
備考○塩硝は統制の期間が長く続いており、出荷時期もあったので生産量ははるかに多かったと考えられる。
○蝋は移出品。蝋燭(ろうそく)は移入品と考えたが、蝋も移入品である可能性が高い。

 小白川口を通って越中側から飛騨へ入ったと考えられるもの
 品 目記帳件数数量合口役銀合主な荷主の名前・出身地等
11231石6斗41匁9分4厘萩町村10人で4石などは自家用飯米。城端商人など20石は入込み。
2稗(ひえ)12石2斗2匁2分  小白川村利兵衛
3糀(こうじ)22石3斗1升3匁5分4厘城端の商人惣右衛門1石5斗
451石7斗15匁1分4厘城端の商人が多い
5から粉(こ)22石2匁   城端の商人2人
6売薬(ばいやく)1300目7分4厘越中□□村市兵衛
7菅笠(すげがさ)2500蓋22匁   越中城端弥惣右衛門400・越中城端佐助100
8苧桶(おおけ)2883匁8分7厘越中城端甚右衛門50・越中城端勇蔵38
9蝋燭(ろうそく)110貫13匁3分  小白川村勘右衛門
備考○越中城端商人の入込みが過半を占める。  
○「から粉」は穀粉。小麦をひいたかす。家畜のえさにしたというが、口役銀が高いので別のものかも。

 移出・移入の区別がつかない品目
 品 目記帳件数数量合口役銀合主な荷主の名前・出身地等
1大豆11斗1分7厘小白川村利兵衛
備考○小白川村利兵衛は別の日に稗2石2斗を運んでいる。小商人か、歩荷かもしれない。