5-2-(19)-1 二ッ屋御番所口役銀取立帳
二ッ屋村は村高四石六斗余、家数五件(元禄検地当初)という極めて小村であったが、隣国越中は外様大名加賀前田藩の支藩であり、金森氏領国時代から国境紛争が絶えなかったので、寛政二年(一七九〇)の施政改革の時も廃止されることなく存続していた。
別紙「口役銀取立一覧表」によっても明らかなように、二ッ屋口御番所は口役銀取立が目的ではなかったことがわかる。
この「口役銀取立帳」に記載されている荷主はほとんど越中八尾と井波の小商人(あるいは歩荷)で、地元では元田村の与三右衛門・与三郎の二人が稗八斗を運んでいるのみである。
八尾・井波の人々は、古川町あたりまで往来したものと思われる。
5-2-(19)-2 二ツ屋口御番所取立口役銀品目一覧表 (安政4年5月分・文久2年12月分・明治2年4月分) |
①安政4年(1857)5月分 | |||||
・新暦対照5月23日~6月21日 | |||||
・口役荷物通行日数 1ヶ月30日のうち6日 | |||||
◎ 二ッ屋口安政4年5月分の口役荷物集計(件数が少ないため、日付けごとにまとめた) | |||||
月 日 | 品 目 | 出荷物 | 数 量 | 口役銀 | 荷主の名前・出身地等 |
入荷物 | |||||
4月8日 | 諸紙(しょし) | 不明 | 2貫 | 8分4厘 | 越中富山代助 |
15日 | 干鰯(ひいわし) | 入 | 400 | 4分7厘 | 越中長谷吉兵衛 |
20日 | 小鯖(こさば) | 入 | 225 | 6分1厘 | 越中八尾佐右衛門 |
〃 | 素麺(そうめん) | 入 | 1貫500目 | 4分1厘 | 越中□□宅右衛門 |
22日 | 干ぜんまい (ほしぜんまい) | 出 | 6貫500目 | 9分8厘 | 八尾忠蔵 |
23日 | 砂糖 | 入 | 1斤半 | 2分7厘 | 八尾甚右衛門 |
〃 | 飴(あめ) | 入 | 2貫100目 | 4分5厘 | 八尾甚右衛門 |
27日 | 小鯖 | 入 | 450 | 1匁2分2厘 | 八尾吉四郎 |
合わせ | 通行口役荷物 6日間に8件 口役銀5匁2分5厘 | ||||
○江戸時代はいわゆる山中紙・高山紙の生産が盛んであったが、他国の紙も入っているので、ここでは諸紙を出入不明とした | |||||
②文久2年(1862)12月分〔この月、口役荷物の通行1件もなし〕 | |||||
・新暦対照は1月20日より2月17日 真冬厳寒の時期である。 | |||||
・12月中は雪多く積もり、役荷物の通行が1件もなかった旨、取立帳の末尾に記録されている。 |
③明治2年(1869)4月分(新暦対照5月12日~6月9日) | |||||
◎ 二ッ屋口を通って飛騨から越中側へ出たと考えられるもの | |||||
品 目 | 記帳件数 | 数量合 | 口役銀合 | 主な荷主の名前・出身地等 | |
1 | 干ぜんまい | 5 | 17貫600目 | 永 44文1分 | 越中井波・八尾商人 |
2 | 出煙草(でたばこ) | 1 | 12斤 | 永 10文7分 | 越中井波惣兵衛 |
3 | 蛹ひび | 1 | 2貫100目 | 永 16文8分 | 越中井波吉左衛門 |
備考 | ○どの品目も越中井波と八尾の商人が買いつけたものと考えられる。 | ||||
◎ 二ッ屋口を通って越中側から飛騨へ入ったと考えられるもの (一)食品 | |||||
品 目 | 記帳件数 | 数量合 | 口役銀合 | 主な荷主の名前・出身地等 | |
1 | 米 | 6 | 1石3斗 | 永 43文3分 | 越中八尾の人5人 |
2 | 大麦 | 5 | 2石 | 永 60文 | 越中八尾勘四郎・長八 |
3 | 稗 | 2 | 8斗 | 永 13文2分 | 元田村与三衛門・与三郎 |
4 | 酒 | 5 | 6斗9升 | 永 93文5分 | 越中井波吉右衛門・惣兵衛・惣四郎・八尾惣兵衛ほか |
5 | 鰯 | 7 | 5,250 | 永105文1分 | 越中八尾孫四郎3000ほか八尾井波6人300~600ずつ |
6 | 小鯖 | 3 | 970 | 永 43文6分 | 越中井波和吉620ほか八尾2人 |
7 | 干鯖 | 1 | 700枚 | 永 17文6分 | 越中小出村吉兵衛 |
8 | 塩鯖 | 1 | 6貫800目 | 永 13文7分 | 越中井波和吉 |
9 | 田作(たつくり) | 1 | 1石1斗 | 永 40文5分 | 越中八尾孫四郎 |
備考 | ○魚の移入が多く、穀物の往来は少ない。 | ||||
○元田村与三右衛門・与三郎の稗は歩荷かもしれない。 | |||||
◎ 同上 (二)小間物・雑貨・その他 | |||||
品 目 | 記帳件数 | 数量合 | 口役銀合 | 主な荷主の名前・出身地等 | |
1 | 小間物 | 5 | 18貫 | 永 25文 | 越中八尾孫三郎・城端伝右衛門・井波和吉ほか |
2 | 諸紙(しょし) | 1 | 2貫500目 | 永 17文5分 | 越中井波吉右衛門 |
3 | 笠緒(かさお) | 2 | 700筋(すじ) | 永 12文5分 | 越中井波和吉500筋・越中井波和吉200筋 |
4 | 苧かせ(おかせ) | 1 | 10貫500目 | 永 52文 | 越中戸出村太右衛門 |
5 | 手桶 | 2 | 6ッ | 永 5文2分 | 越中八尾惣四郎4ッ・越中八尾甚助2ッ |
6 | 釘 | 1 | 30把(ば) | 永 9文 | 越中井波又八 |
7 | 銭(ぜに) | 1 | 4貫 | 永 10文 | 越中八尾源蔵 |
8 | 荏粕(えかす) | 1 | 15枚 | 永 10文 | 越中井波吉右衛門 |
備考 | ○荏粕は荏(えごま)から油をしぼった粕。家畜の飼料としたという。 | ||||
○苧かせは麻苧の束か。口役銀が高い。出荷物かもしれない。 | |||||
○諸紙は出荷物かもしれないが、越中八尾付近はいろいろな紙を生産していたので、一応移入品と考えた。 荷主吉右衛門は、越中井波の小商人か歩荷であろう。 |