布告
皇政更如(コウシ)ノ折柄、富国ノ基礎(キソ)立テナサレ候御趣意体認(タイニン)奉リ、当国ニ於テモ商法局(キョク)ヲ取リ建テ、人材抜擢致シ、商法方申シ付ケ、衆議ノ上追々規(キ)則相立テ候間、私ヲ去リ公義ニ基(モトヅ)キ、存ジ寄リコレ有ルモノハ商法局ヘ建言(ケンゲン)致スベク候。右商法局取リ建テ候趣意ハ、物価(ブッカ)ヲ平均ニシ、金穀ノ融通(ユウヅウ)ヲ宜(ヨロシ)クシ、商法ヲ正(タダ)シク国ヲ富(トマ)シ民ヲ救フノ策(ハカリゴト)ニテ、固(モトヨ)リ拙者ノ私スル事ニハ決シテコレ無ク候間、衆庶(シュウショ)疑惑(ギワク)ヲ生ゼザル様致シ度ク存ジ候。前顕(ゼンケン)衆議ノ上、追々規則相立テ度ク候ヘドモ、先ヅ差シ当リ左ノ通リ。
一拠(ヨンドコロ)無キ次第コレ有リ窮迫(キュウハク)致シ候士民ヘハ慥(タシ)カ成ル引キ当テヲ以ッテ金銀ヲ貸シ候事。
一近頃生糸下落致シ困窮ノ商人ドモ難儀ニ及ビ候由、不憫(フビン)ノ事ニ付キ、救イノ為ニ質ヲ取リ候事。
一貧民救ヒノ為ニ安利ニテ小質ヲ取リ候事。
一世上未ダ穏(オダヤ)カナラザル折柄、金銀貸シ付ケヲ危(アヤブ)候モノハ期限ヲ立テ預ケ置キ、其ノ期限ニ至
リ相応ニ利足ヲ付ケモドシ候事。
右ノ通リ相心得申スベキ者也。
辰七月朔日
梅村速水
商法方長 屋貝権四郎
商法方 鷲見 佐吉
同 平瀬安兵衛
同 江馬弥兵衛
〔解説〕
勧農方の布告と同時に出された、商法局の布告である。
梅村知事は商法局設置の目的を、「物価ヲ平均ニシ」、「商法ヲ正シク国ヲ富(トマ)シ民ヲ救フ」ためと説いて、すぐさま諸物産の強制買い上げ、販売の統制等、商法局の施策を性急に進めていくが、反面、今まで思うままに商いの手を広げて大きな利益を得てきた有力商人のみならず、中小の商人、一般庶民の中にも、梅村県政に対して反感を抱く者が増えていった。