〔表紙〕
野麦峠小屋諸入用帳
〔記録〕
金壱分ニ付
十三日勤
一、大工五拾七人 孫右衛門
此賃銀六拾四匁六分弐厘
同 断
一、同 四拾三人 久右衛門
此賃銀四拾九匁六分弐厘
十五日勤
一、同 五拾五人 作右衛門
此銀五拾五匁
合 大工百五拾四人
此賃百六拾九匁弐分四厘
此金弐両三分永七拾文七分
此銭四百六拾四文
十二日勤
一、木挽(こびき)三拾弐人 忠七
此銀四拾匁
同
一、同 三拾九人 喜平
此賃銀四拾八匁七分五厘
同
一、同 三拾弐人 市右衛門
此賃銀四拾匁
合 百三人
此賃銀百弐拾八匁七分五厘
此金弐両弐朱ト永弐拾文八分
此銭百三拾六文
十一日勤
一、杣弐拾五人 三次郎
此賃銀三拾四匁九厘
同
一、同 拾八人 七左衛門
此賃銀弐拾四匁五分五厘
同
一、同 三拾壱人 清吉
此賃銀四拾弐匁弐分七厘
合 七拾四人
此賃銀百匁九分壱厘
此金壱両弐分弐朱永五拾六文八分
此銭三百七拾弐文
一、葺榑(ふきくれ)六拾八束
此代金三分三朱ト
銀四匁壱分五厘
但 金壱分ニ付
拾八束替
一、金四両三分壱朱ト 米代
壱匁五分壱厘
一、三拾六匁八分 釘代
右寄(よせ)
金拾弐両壱分永八拾五文八分
銀四拾弐匁四分六厘
此金弐分弐朱永八拾弐文七分
二日
合 金拾三両永四拾三文五分
此銭弐百八拾四文
〔解説〕
野麦峠お助け小屋の普請にかかった費用のまとめである。
大工三人・木挽三人・杣三人に支払った賃銀のほか、葺榑代・米代・釘代が支出されている。
葺榑は金一分に付き一八束と記されているが、誰から買ったかは記されていない。
米代は大工・木挽・杣に対して、一日五合ずつ、賃金のほかに支給したのではないかと思われる。
賃金は大工・木挽・杣の中で杣が一番高く、金一分で十一日勤め、大工の作右衛門は金一分で一五日勤めの勘定になっている。
同じ大工でも孫右衛と久右衛門は金一分で一三日勤めである。
そうした賃銀の格差は、業種間で、また同業者の間で自然に決まっていたようである。
ちなみに、大工・木挽・杣・左官・黒鍬などの賃銀は銀勘定であった。
この入用帳の記録者名は記されていないが大古井村太郎兵衛が責任者であったと思われる。文字は高山の筆工が書いているかもしれない。