納経帳は当時の世相や宗教の状況を知ることのできる貴重な史料であるが、紙面の関係上、次の五カ寺の納経を例示してみる。
① 第七十九番札所
(大谷玉林、四国遍路の第一歩を印す)
奉納経
本尊 阿弥陀如来
讃州 仏光山 道場寺
月 日 行者丈
② 第二十四番札所
(空海の名前の由来を物語る室戸岬)
奉納□□□
本尊 地蔵□菩薩
土州 室戸山 明星院
最御崎寺(ほつみさき寺) 知事
月 日 行者丈
若き日の空海は室戸岬の洞窟の中で修業中「明け明星」が口から体内に入るのを感じて、悟りを開いたという。
③ 第七十五番札所
(弘法大師空海生誕の地に建立された寺)
奉納経
本尊 薬師如来
西院 大師御誕生所
勅願所 讃州 屏風浦 善通寺
十二月三日
④ 第七十九番札所
(保元の乱で配流となった崇徳院を併祀)
奉納経
本尊 十一面観音
崇徳院御鎮座所
讃州 広尼珠院
卯 五月二日
保元元年(一一五六)、崇徳上皇側と後白河天皇側との間に争乱が起こり、敗れた崇徳上皇は平清盛らによって讃岐へ流された。
⑤ 第八十八番札所
(四国八十八カ所遍路結願(けちがん)の地)
奉納経
本尊 薬師如来
讃州 医王山
大窪寺(おおくぼ寺)
五月七日 行者丈