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発刊によせて

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町議会議長 飯田作次

 「多古町史」の発刊を心から喜ぶものである。文字通り「町史」は町の歴史であるが、それが地域や国の歴史につながり、またはその地方独特の変遷があって面白い。「多古町史」が大方の参考となり、広く町民に愛読されることを願うものである。
 「多古町史」が旧村のことに意が注がれ、そこに遠い祖先や父祖の足跡を見ることは、大変有意義に思う。新しい時代の創造は、かつてのわが村の様相を振りかえることから始まる。「町史」が『温故知新』すなわち古い物事を究めて、新しい知識や見解をひらく指針ともなれば幸いである。
 いま〝新しいふるさと作り〟運動がしきりに提唱されている。それは、ややもすると目先きの日々に追われ、心ならずもふるさと離れの傾向にある人々の心のゆとりを取り戻し、新しいふるさと意識を高めようとする事だと私は思う。そのためには、まずふるさとを認識することである。良く知るところに自然と愛情が湧き、それが郷土愛を育て、やがて祖国愛につながってゆく。すべての人々が、自分の住む地域を愛して止まない心を抱くとき、『みどりとやすらぎの町』が生まれるのである。
 もっぱら漁撈や狩猟の生活を送った原始の時代から現代まで、その時代々々の特色はあったにしても、父祖たちは隣人を愛し、共に励まし助け合って、家庭・地域社会・国家を築いてきた。その生きざま、こし方がすなわち歴史であり、多古町史である。
 私たちは、先人の流した血と涙と汗のしみこんだ故郷を、何時までも大事にし続けなければならない。