札打(ふだぶち)
正しくは、「久賀大師十善講」という。本来は、弘法大師が四国内に定めた八十八カ所の霊場を巡るもので、「お遍路」といわれている。それは祖先の供養と現世の利益を求める修業の旅で、一番寺の徳島県板東村霊山寺に始まり、八十八番の香川県奥山村大窪寺に終るものである。
この形をこの地方に移したものが「札打」で、旧久賀村の寺院が発起人となり、香取・海上・匝瑳の三郡内で、真言・天台・禅宗の各寺院八十八カ寺を遍路の旅としたものである。
発祥は明確ではないが、永台寺門前に残る二基の記念碑が、この事実を伝えている。その刻字は「南無遍照金剛 阿州鶴林寺写第二十番 惣躰山永福寺 安政七年庚申年(一八六〇)三月二一日全願主二十一夜講中惣村中」、もう一基にも「南無遍照金剛 阿州黒谷寺写第四番 宝光山連台寺」とあり、年号、願主は同じである。
この行事は、現在も絶えることなく続けられているが、旅をする範囲は縮小され・柏熊・小三倉・次浦・出沼・赤池・御料地・大穴・二本松・高津原・井戸山・西古内・山倉(四ケ寺)・中峯・上ノ台・高萩・大角・八本・神生・仁良・長岡・新里・内宿・三軒家・河岸湖となっている。毎年四月十一日から十五日までの四泊五日、年毎に相談して巡回順序を決め、善男善女が村毎に講をつくってこれに参加している。
発願主の二十一夜講とは、弘法大師の命日である二十一日の夜寺に集まって供養をするもので、特に祥月命日の三月二十一日は盛大である。