高橋彦兵衛家では、いつ頃誰が創始したのか、あるいは誰から伝授されたものであるかはわからないが、先代の頃まで、村内ばかりか、遠くの村の人々にまで広く伝えられた秘薬が作られていた。
ハレモノ(腫瘍)の薬で、特に口(排膿口)のないハレモノに卓効があり、この薬を使用すると痕跡が残らないところから、おもに婦人の顔のハレモノに対して多く望まれ、訪ねて来る人が多かったという。
求めに応じて施すだけで、代価を要求することもなく、ひたすら家伝として守り続けて来たことに、深い敬意を表したい。
原料製法については相伝の秘法で、口伝は今に伝えられているということである。