また、本堂裏に道路を覆う形で大きな松の木があり、檀林の始業終業を告げる鐘が枝に吊げられていた。
ある一夜、鐘が姿を消してしまい、八方探したが見当らなかった。村人達の話には、この鐘は松崎神社で作ったものだが、祭神が鐘を嫌ったため顕実寺に預けられた。しかし、神社で作られた鐘は自ずと仏道を好まず、そのゆえに姿を隠したのであろうという。
そして数十年経たある日、栗山川の水底に深く沈んだ鐘を見つけた村人があり、またある人はその鐘に白蛇が巻きついているのを見たという。このことからさきの松を「鐘掛けの松」と呼び、鐘が沈んでいた所を「鐘ケ渕」と名付けたということである。