本堂に入って内陣右手を見ると、鬼子母神の厨子があるが、現在も集落内の主婦たちから崇敬されているものである。
境内の石塔物としては、門前に題目塔があり、「南無妙法蓮華経 妙観寺 文化十四年丁丑(一八一七)七月 発起主妙相尼惣檀中」と刻まれている。
本堂右手に小堂があって、石像と角塔が納められているが、その石像には、「南無釈迦佛三萬餘部成就 諸願具足心大歓喜 天明二壬刁(一七八二)四月吉日 本成院営之」とある。
角塔には、次に示すように多くの聖人名が刻まれているのであるが、その大部分が削り取られている。これは後年になって不受不施信仰禁止のとき、その証拠を秘匿する意図から故意になされたものであろう(口絵参照)。
「南無多宝佛[無辺行〓 上行〓] 日朗菩薩
南無妙法蓮華経 南無日蓮大菩薩
南無釈迦[浄行〓 安立行〓] 日像菩薩
日 聖人 日 聖人 日 大徳
開眼沙門
[ 聖人 日 聖人 日 聖人 聖人 日 聖人 日 聖人] 日順(花押)
六老僧 日親聖人 聖人 日領聖人
九老僧 日 聖人 聖人 日弘聖人
中老僧 聖人 日進聖人
恭磨方石聊擬宝塔以我 乃至法界平等利益
高祖宝向五百遠忌鴻恩 円了院妙信日受
之不可忘世両旁勒列祖者 願主本成院善久日昌
貴其振緒之勲躋祔太廟也 清〓院了信日利
明和七庚寅(一七七〇)二月吉祥日
なお、右の聖人名の欠字については、わずかに次のように判読できるものがある。すなわち日述・日講・日浣・日泰・日誉・日饒・日照などで、いずれも宗門における傑僧である。
また当寺には、獅子舞具一式、雌獅子・雄獅子の頭、お囃道具数組があり、今でも毎年七月の土用干しと称する消防器具の手入れ日に、消防団員たちが獅子舞装束を着け、お囃しの曲と共に集落内の各戸を回り、邪鬼を払う行事が行われている。そのいわれ・起源については知る人がない。