羽曳野丘陵西縁の富田林市五軒家付近の海成粘土層Ma3の下部には泥炭層があり、ミツガシワなどの寒冷型植物の化石がみつかった。このことはMa3海成粘土層が堆積する直前は、気温の低い時期があったことを示しており、この寒冷な時代を「五軒家寒冷期」とよんでいる(Minoru ITIHARA ; Some Problems of the Quatanary Sedimentaries in the Osaka and Akasi Areas, Japan. Journal of the Institute of Polytechnics Osaka City University)。
こうした例のように、大阪層群中には堆積当時の環境によく対応した植物や動物の化石が多数含まれている(9)。大阪層群の下部の地層からは、イケチョウガイなどの貝類、メタセコイヤ・イチョウなどの温暖型の植物、それにアカシゾウ・スギヤマゾウなどの大型哺乳動物などの化石が産出する。
Ma3海成粘土層中のアズキ火山灰層より上部の地層になると、メタセコイヤなどの温暖型の植物は姿を消し、氷期の寒冷な気候に対応するミツガシワ・チョウセンマツやグイマツの化石がみられるようになる。また氷期と氷期の間の温暖な間氷期には、アデク・ハンノキ・イチイガシなどの温暖型植物がみられた。さらに温暖な時期の地層からは、豊中市において全長八メートルに達するマチカネワニという、現在の東南アジアのものと同種のワニの化石が発見されている。ゾウは中国に広くみられるものと同じシガゾウ・トウヨウゾウがあらわれる。このことは、当時アジア大陸と日本列島が朝鮮半島を通じ陸続きであったことを示している。富田林市付近の大阪層群の地層中からも、こうした動植物の化石が採集される可能性もあり、造成工事などの際に注意すれば、思わぬ発見があるかもしれない。