富田林の市域では、主に石川の西岸に中位・低位段丘に相当する段丘がみられる(付図参照)。高位段丘にあたるものは市域内にないが、羽曳野丘陵の西北部の一部や河内長野市の天野山付近に、特色ある赤色の礫層をのせた様子をみることができる。
中位段丘は、現河床面との比高が一〇~四五メートルで、三~一〇センチ径を主とし、時に五〇センチ径をこえる和泉砂岩・礫岩、それに花崗岩の礫を含む礫層におおわれている。段丘堆積物は段丘崖の各所で観察できるほか、いくつかのボーリング資料からも知ることができる(15)。錦織の大谷女子大学付近から芝・新家・南甲田・北甲田・富田林・新堂・中野・川面を結ぶ崖あるいは段が中位段丘であり、それよりさらに低い面である石川の氾濫原との境界をなしている。なおこの中位段丘面は、市営須賀住宅付近から河南高校付近、さらに宮町にかけての羽曳野丘陵のすそに沿った線を境に丘陵側の傾斜がやや急になっている。これは中位段丘形成時にも富田林背斜の形成が続行しており、丘陵に近い段丘面がそれにともなって隆起したためで、石川の流路もこれにともない東方へその流路を移していったと考えられる。石川の東岸では、佐備川沿いに小面積ではあるが中位段丘がみられる。さらに市域外の河南町寺田から中村・芹生谷にかけて、かなり広い面積の中位段丘面が展開している。
錦織付近では、前に述べた中位段丘面と石川の河床面との間に、かなりの面積をもつ平坦面がみられる。河床面との比高は五メートル前後で、この面は下流にあたる富田林高校の東のあたりまで続いていて、低位段丘面に相当する。また、石川東岸の嬉・西野・伏見堂付近の面も低位段丘面であり、河床面との高度差は約一〇メートルある。これに続いて東岸では、板持・山中田(やまちゅうだ)・南大伴・北大伴付近に、石川・佐備川・東条川に囲まれて、河床面との比高五メートル前後の低位段丘面が分布している。これらの低位段丘面は中位段丘とほぼ同様の礫層におおわれている(15)。