近年、自然の喪失がとみに問題とされている。富田林もその例外でないことはいうまでもない。しかし富田林市の場合は、まだ比較的自然が多く残された地域だと感じている人も多いであろう。たしかに大阪市の市街地などと比較すれば緑が多い。また、はるかにながめれば金剛山の山並も濃い緑におおわれている。
さて、いわゆる自然を表す言葉としてよくつかわれる「緑」であるが、それは植物の緑をさしていることはいうまでもない。緑、すなわち植物が、地質や地形とならんで、自然環境の重要な構成要素であることを示しているのである。また人間活動も植物と深いかかわりをもっている。このように植物を自然の構成要素としてみる場合は、植物を単独にみるのではなく、植物の集合としてとらえることになるが、これを植生という。
現在富田林付近で私たちがみることのできる植生とはいかなるものであろうか。市街地や耕地の緑はもちろん人工の植生であるから、本来の自然の植生は羽曳野丘陵や金胎寺山、嶽山といった丘陵地や山地にかぎって残されているといってよい。羽曳野丘陵では急ピッチで開発がすすむなかで植生も大きく変わりつつあるが、十数年前まではほぼ全域がアカマツを主体にクヌギなどの雑木をまじえた林であったことを記憶している人も多いであろうし、現在も各所にその名残をみることができる。嶽山や金胎寺山でも、東側斜面は多くがみかん園となっているものの、西側斜面はやはり羽曳野丘陵とよく似た植生となっている。