植生の変遷

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ある地域の植生は、その地域の地形・土壌・気候などの条件に左右されるが、なかでも気候が最も重要な条件である。ところで、気候というものは、地域によって異なるのは当然であるが、さらに長期にわたってみると時間的にも変化することに注意を払う必要がある。

 第一節で述べたように、第四紀更新世(洪積世)という時代は氷河時代とよばれて、世界的に気候が寒冷化し、氷河が発達したことが知られている。そうした気候の変動は当然植生にも影響を与えたわけで、その様子は、その当時、堆積した地層の中に含まれている植物化石を調べることによって知ることができる。こうした時代を中心に堆積した大阪層群中の植物化石は、前に述べたとおりであり、大阪層群下部にはメタセコイヤ(16)・フウ・イチョウなど温暖な気候条件下に栄えた植物の化石が含まれ、アズキ火山灰を境にして、大阪層群上部の地層からは、気候の寒冷化に対応するミツガシワ・チョウセンマツ・ヒメバラモミ・グイマツなどの植物群が優勢となっており、大阪層群堆積当時の気候条件の変化を知ることができる。

16 メタセコイヤの樹葉(現生)

 今から約一万年前以降の沖積世に入ると、氷河の勢力は衰え、地球は温暖化していく。植生もそれにつれて変化していったが、もう一つ、植生に大きな影響をおよぼすものとして、人間の働きをみのがすことができない。というのは沖積世という最近の約一万年間は、人間が活発に活動し、そのことが植生に大きな変化を引き起こす要素となっているからである。

 このように現在私たちのまわりにみられる植生というものは、時間的経過のなかで植物にとってのさまざまな条件が変化した結果、植物がそれに対応して形成されたということである。以下、ホモ・サピエンスの活躍が始まったのちの第四紀更新世(洪積世)のウルム氷期以降を中心に、植生の変遷をたどってみよう。