先にも少しふれたように富田林市付近の現在の植生は、こうした植物をめぐる環境の移り変わりの中で形成されたものであるが、ここでもう少し現在の植生についてふれることにしよう。
富田林市付近の現植生の基本はアカマツ林であると考えられ、羽曳野丘陵などにその典型をみることができる(19)。自然植生、またはそれに近い状態で管理されているアカマツ林では、アカマツの樹冠がまばらで林内に光が十分差し込むため、ソヨゴ・クヌギ・アベマキ・コナラ・コバノミツバツツジ・アカメガシワなどの陽生植物が多く生えている。また金胎寺山周辺では、コナラを中心としてヒサカキ・ソヨゴ・ヤブコウジ・クヌギなどからなるコナラ林がみられる。
一方、以上のような一般的な植生のなかにあって、かぎられてはいるがこれらとは異なる特色をもつ植生の地域が存在することもみのがせない。それは神社や寺院の森である。神社や寺院のある場所は遠くからでも容易に見分けることができる。鳥居や特徴のある屋根のためでもあるが、それに加えて周辺とはちがう植生からも判別できるからである。こんもりとよく茂った森はひときわ目立つ存在であり、森を構成する樹種にも特色がある。富田林市内では、たとえば宮町の美具久留御魂神社(20)や彼方の春日神社の森にこのような例をみることができる。