原植生としての照葉樹林

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彼方の春日神社の森についてくわしい調査が行なわれているので、それに基づいて述べてみたい(近畿植物同好会社寺林調査委員会『社寺林調査報告』(2))。春日神社の森で最も優先する樹種はシリブカガシで、クロバイ・ヤマモモ・アラカシ・ソヨゴ・サカキ・ヤブツバキなどとともに森を構成しており、このような常緑広葉樹からなる森林を照葉樹林という。以前は、西南日本のほとんどの地域が、こうした照葉樹林におおわれていたのである。照葉樹林が全盛をほこっていたのは今から六〇〇〇年~三〇〇〇年前のことであるが、今日、私たちが社寺の森に見るのはその名残である。

 なぜ今日、照葉樹林がごくかぎられた部分にしかみられなくなったのであろうか。これまでの研究によると、最後の氷期が終わりをつげてのち最近までの一万年の間は、植物の分布を根本的にかえてしまうような気候の変化はなかった。つまり本来ならば富田林市を含む大阪平野一帯は、その気候条件とつりあった原植生である照葉樹林におおわれているはずである。