第Ⅲ様式の土器片には壺六六、鉢二四、高杯二四、壺用蓋三、甕四一のほか、把手片が四ある。壺には頸部が外傾して開く広口壺(126・2~8)と内傾する短頸壺(126・9)があり、前者には口縁端部のほとんど拡張しない形態(126・2)と拡張する形態(126・3~8)がある。口縁端部のほとんど拡張しない形態は、第Ⅱ様式から引き続く形態で、第Ⅲ様式でもきわめて古い様相を示している。文様は口縁部内面に扇形文、外面に波状文、頸部外面に櫛描直線文をもつ。口縁端部の拡張する形態には、斜め下方に小さく拡張するもの(126・3~5)、下方には小さく、上方に大きく拡張するもの(126・6~8)、上方に向かってのみ大きく拡張するものがある。
なお、上方に小さく、下方に大きく拡張する端面をもつ第Ⅲ様式でも新しい様相を示す形態は認められない。文様構成として、下方に拡張するものは口縁端部に簾状文を施すことが多いが、その場合には下端および上下端に刻目を付加することもある。そのほか、斜格子文も認められる。下方に小さく、上方に大きく拡張するものは、口縁端面に列点文、簾状文、波状文、縦線文が認められる。なお、この種の壺の口縁端面の拡張方法は、本V字溝出土の壺では二種類認められる。それは、斜め下方に小さく拡張した口縁端部をもつ端面の上端に粘土を継ぎ足す方法と、端面全体を張り付ける方法である。上方に大きく拡張するものは、曲折して立ち上がる形態をもち、曲折部分に刻目を加える。短頸壺は二点あるが、ともに列点文と円形浮文が施されている。
鉢は口縁部が直立する形態(126・11)と段状の形態(126・12)、外反する形態がある。直立する口縁部をもつ鉢は大半が無文であるが、貼り付け凸帯の上に刻目を加えた例(127)や列点文を施した例もある。段状の口縁部をもつ鉢は口縁端部に列点文、簾状文、口縁下部に簾状文を施す例がある。短く外反する口縁部をもつ鉢は、屈曲して「く」の字形に外反する形態と、外反した口縁部が下方へ拡張する形態がある。前者は口縁下端に刻目、口縁下部に波状文と櫛描直線文が施されている。後者はすべて簾状文が施されているが、口縁端部に刺突文を付加する例もある。
高杯は杯部片と脚部片がある。杯部片には口縁部が直立する形態(126・13・14・16・17)と水平にのびた後、垂下する形態(126・15)がある。直立する口縁部をもつ高杯は、ゆるやかに立ち上がる形態と曲折して立ち上がる形態がある。前者には列点文を施す例と口縁端部に刻目を施す例がある。後者には凹線文を施す例がある。水平にのびた後、垂下する形態をもつ高杯は、垂下部分を貼り付けるものと折り曲げて作るものがある。すべて無文であるが、口縁部内面には断面四角形の凸帯が一本めぐらされている。脚部片の大半は裾部片で、すべて無文である。柱状部残存のもの(126・19)には、中実の第Ⅲ様式でも古い様相をもつ形態のほか、第Ⅲ様式にはじまった円板充填法による脚部もある。全体的に脚部には、裾部の拡張の広いものはない。
壺用蓋は中央が凹むつまみをもつ蓋(126・20)と、突出したつまみをもつ蓋がある。
甕は口縁端部の丸くおさまる形態(126・22・23)と拡張する形態(126・24~26)がある。体部の外面調整には刷毛目、ヘラミガキ、ヘラケズリが認められる。なお、ヘラケズリが施された甕(126・23)は外面に炭化物質が付着している。